円高を止める手立てはあるのか?日銀の金融緩和について
- 2019.08.18
- ファイナンシャルプランナー(FP) 経済 資産運用
円高を止める手立てはあるのか?日銀の金融緩和について
円高の流れが止まりませんね。米中貿易摩擦による、世界経済の景気減速が徐々に実際に企業の決算などにも表れ始めてきています。
住んでいる私たちにとっては日本の年金制度は崩壊しているし、国債(国の借金)残高は1000億円こえているし・・人口は減っているし・・大丈夫なのかなと思っているかもしれませんが世界的に見れば日本は安全な国なのです。
ということで今回のような米中貿易摩擦やイランの問題などが起こると、安全資産である円を購入しようとします。
円を購入しようとする人が増えると相対的に円が高くなります。
ドルと円で比較をすると、1ドル100円だったら、102円になれば円安。99円になれば円高ということです。
米ドルがこのブログを書いている時点では106円台の前半です。特にこの流れに逆らう動きが無いので、このまま円高(下落)局面に小さな上下動をしながら進んでいくことが予想されます。
運用は下がればいつかは上がると思うかもしれないのですが、その底がなかなか見えてきません。ドルと円の節目はおそらく2019年の年初のフラッシュクラッシュのときにつけた104年後半が一つの節目になると思われます。
円高になると日本経済に大きな打撃を与える
想定為替レートとは
日本はトヨタ自動車やパナソニックなど商品を海外に輸出して売上を得ることが主体となっている製造業が多く、「輸出産業」と言っています。
ドルと円の為替相場は日々変化しています。アメリカに輸出して販売した時は受け取るお金はドルで受け取るので、ドルはいつか円に変えなければなりません。
企業は1年ごとに決算発表をしなければいけないので、その時には今輸出で売り上げて受け取ったドルを円に変えなければいけません。ただ、大きな会社は、投資家や世間からの注目が高いので企業の目標などもホームページや投資家向けに公表する必要があります。
その時には、1年後ドル円の為替が100円なのか110円なのかわかりませんよね。
ということで1年後、各企業はドルと円は1年後は110円位じゃないかなーー、、105円位じゃないかなーなどという予想をたてて、投資家やホームページなどで1年後はこれくらいの利益を出します!という約束をします。
このときの予想のドル円の金額を「想定為替レート」といいます。
1年後の為替を想定しているものだからです。
この想定為替レートがA自動車メーカーで例えば1ドル110円だったとします。輸出の売上が10000ドルだったら、円に換算すれば110万円になります。
1年後、想定は1ドル110円だったのですが、実際は思ったより円安で111円だったとすると輸出の売上10000ドルだったら、円に換算すれば111万円になります。
同じ10000ドルなのにその時の為替で円に換算した時の金額が変わるので、円安になればA自動車メーカーの利益が当初予定より大きくなります。
逆に円高になってしまうと、例えば当初110円で予測していたものが、109円になってしまっていたら、10000ドルの売上が109万円です。
ということは円高になると輸出業は当初の想定よりも利益が下がってしまうのです。
輸出業が強い日本は円高になると日経平均株価の上昇が抑えられたり、下落したりするのはこのためです。実はかなり日本はサービス業の比率も高くなってきているのですが、輸出業が強いというイメージがまだ根強くのこっているため、日本は円高になると不利だというイメージがあります。
日本の誇る輸出業は、冒頭申し上げましたがトヨタ自動車、ホンダ、パナソニック、三菱自動車などまだまだありますが、世界でも有数の有名かつ大企業が名を連ねています。
サービス業も負けていないとはいえ、円高になればこれだけの名だたる企業が悪い影響を受けるわけですから、円高は日本には不利というのは一概には言えませんが、決して間違いはありません。
今のこの日本の輸出業を取り巻く環境は、米中貿易摩擦によって売上も減少し、円高により利益も減っているという状況です。
日経新聞によるとこのまま主な輸出企業20社をピックアップし、このままの円高水準が期末まで続くと営業利益は2500億減少するのだそうです。
また日本の輸出業が打撃を受けるということは、日本経済全体に与える影響も大きいということです。日本の輸出業が打撃を受ければ、数多くの部品や技術を納品している下請け中小企業への影響も甚大です。
トヨタが利益が下がればそれはそれで影響は大きいのですが、トヨタに納品している部品供給会社は無数にあります。
大企業の業績悪化は、そこに納品している中小の部品納入業者にも甚大な影響を与えるのです。
日銀の円高対策
円高を解消するため(円安にするため)に国がとる方法の一つとしては、政策金利を下げることです。
金利を上げれば円高、金利を下げれば円安になります。
金利を上げると日本の国債が今までよりも利益が出る(といってもごくわずかですが・・)ようになったということで人気が出たり、日本の銀行に預金したりする海外の投資家も増えます。
そのため、日本(円)に人気が集まるので、円の価値は高まります。
すなわち円高です。
では円高を解消する(円安にするためには)利下げをすればいいということになります。
利下げをすれば、円は投資家が儲からないので人気が亡くなります。
日本の人気がなくなるので円の価値が下がります。したがって円安になります。
ってことは円安になればいいのだから、利下げをすればいいんだね。
ということですが、そんなにシンプルではありません。
日本はもう金利がゼロどころかマイナスなんです。これ以上下げることができないということです。
ここでは細かい説明は省きますが、政策金利を下げると銀行の収益を圧迫してしまいます。
特に規模が小さい地銀の収益はさらに厳しくなっており、実は危機的状況にあります。
ということもあり、実は日銀は利下げをしたくてもこれ以上利下げをすることができない状況にあります。
日銀は対策はまだあると言っていますが・・
「いやいや無理でしょ!!」というのが専門家の純粋な味方です。
さらにマイナス金利をするのか?
現在はやりのMMT理論を推進するのか?
そこまで大胆な施策はリスクが高すぎます。
ということで、結局は円高の容認が確定というわけです。
何か手段があるというわけではなく、今のところ身動きが取れないのです。
また米中貿易摩擦の方向性が改善したり、その他の特別なイベントがあれば当然話は別ですが、当面はトレンドは円高と考えてよさそうです。
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