景気減速のシグナルとなる「逆イールド」とは?わかりやすく解説
- 2019.08.17
- ファイナンシャルプランナー(FP) 経済
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景気減速のシグナルとなる「逆イールド」とは?わかりやすく解説
その国の景気の減速を示すシグナルとして
「逆イールド」という現象があります。
細かい説明はこれからしていきますが、10年物の債券の利回りよりも2年物の債券の利回りの方が上回ってしまう状態のことを「逆イールド」といいます。
「債券」とは?
債券は借金の借用証書のことです。今回は米国債のお話をしますので、米国を例にとって説明します。
10年物債券で年利率2%の米国債を10000ドル購入しました。
これはどういう意味かというと、米国債を購入するとアメリカという国に10000ドルを貸したという状態になります。
貸したものはいつか返さなくてはなりません。
10年物債券なので、10年後にアメリカは初回販売した時の10000ドルを10年後に返さなければなりません。
またこの米国債は毎年利率2%なので毎年200ドル受け取ることができます。
10000ドルで購入したものが10200ドルになるので年間の利回りは2%です。
2年物債券ということになれば、2年後にアメリカは購入した人に返還しなければならないということになります。
債券の仕組みはざっとこんな感じです。
債券の特徴
例えば米国債が当初10000ドルで発行されました。年利は2%です。
1年間あなたはこの債券を保有していました。
債券はこのような特徴があります。
債券の市場金利と債券価格と利回りの関係
市場金利 | 債券価格 | 債券利回り |
上昇 | 下降 | 上昇 |
下降 | 上昇 | 下降 |
【市場金利が上昇した場合】
世の中の市場環境が何らかの事情で変化し米国のFF金利が上昇したとします。
それに伴い米国債の年利3%という商品が登場しました。同じ10000ドルなのに3%の利率の商品が登場しました。
今どうしても現金があなたは必要な状況です。
誰かに今もっている1年前に10000ドルで購入した年利2%の商品を購入してもらう必要があります。
でも、、、
今は10000ドルで年利3%の商品があるんですよ。誰もあなたの持っている商品を購入してくれません。
じゃあどうするかというと、、10000ドルで当初買ったんですけど9900ドルでいいから買ってください!と値段を下げて売るしかありません。
ということでFF金利(市場金利)が上がると債券価格が下落します。
一定のところまで値段を下げれば、10000ドル利率3%の商品よりもあなたの商品を購入してもらえるようになります。
ただ必要以上値段を下げる必要はありません。ということで市場金利を加味して、債券価格の下落は一定のところで収束します。
1年後に200円もらえるのが債券なので、10000円ので買って1年後200円もらえる債券よりも、9900円で買って200円もらえる商品の方が利回りは上がるのは計算しなくてもわかりますよね。
従って市場金利が上昇すれば、債券価格が下がり、利回りは上昇します。
【市場金利が下がった場合】
ではFF金利がなんらかの事情で下がりました。それに伴い10年国債の金利が下がりました。
世の中にはもう新しくでる米国債は10000ドルで2%なんていうオイシイ商品は無いわけです。
そうなると今度はあなたば持っている10000ドルで2%の商品は世の中にはないプレミアム商品に生まれ変わります。
ということはちょっとくらい高く売っても売れてしまうわけです。ということで市場金利が下降すれば、債券価額は上昇します。
10000ドルで年の利息200ドルの商品よりも10100ドルで年の利息200ドルの商品になった方が利回りが低い、、コストパフォーマンスが悪いですよね。
ということで
市場金利が下落すると市場価格が上昇し、利回りが下がります。
イールドカーブとは
この関係を理解したうえで、、今の米国市場は・・
各国競って利下げをしているようにも見えます。
そうなると市場金利が下がったので、債券利回りが低下します。さらに米中貿易摩擦の影響もあり、株式市場はちょっと厳しいので、株式よりはリスクの低い債券に買いが集まります。
さらに債券利回りが下がっていきます。
債券は一般的にはその期間が長ければ長いほど、利回りが高くなります。
2年債よりも3年債、3年債よりも5年債、5年債よりも10年債の方が利回りが高くなります。
なぜでしょうか?
債券は安全性が高い商品とはいえ、投資商品です。
あなたが、今100万円をもっていて、米国債に投資をしたとします。
2年債だったら2年後に返却(償還)されます。
しかしその代り2年間、その100万円は自由につかえません。
10年債であれば、返却(償還)は10年後です。
100万円が自由に使えない期間は10年間です。
もう一つこれだけ激動の世の中です、ましてやトランプ大統領という何を言い出すか、その一言で経済が大きく動いてしまいます。
そこの2年預けておくのと10年預けておくのとでは、スリルが違うと思いませんか?
投資商品はリスクが高い商品はリターンが大きくなります。
リスクプレミアムと言ったりするのですが、2年のものよりも、10年の債券の方が自由にお金が使えない期間が増えますし、ハラハラする期間も断然長いです。
なので一般的には10年債の方がリスクが高いのです。
長い債券ほどリターン(利回り)も大きい。
これをグラフ化したもをイールドカーブといいます。イールドとは支払うという意味があります。
逆イールドとは
本来はイールドカーブは債券が長いものほど利回りが高いことが原則です。
ところが、今回のような米中貿易摩擦の懸念や、世界の利下げ競争などに伴い債券の価格が上昇し、利回りが下がる事態が発生すると、2年債よりも10年債の方が利回りが高いという当たり前の法則が崩れて、
10年債の利回りが2年債の利回りを下回ってしまいます。
そんな経済の当たり前の原則が崩れるくらいまで、今安全資産である債券の購入に投資家が走っているんだ!!
えらいこっちゃ。。これは株式市場はもう終わった!!という意識が高まります。
逆イールドが発生してから1年~2年の後に景気の大幅な原則が起こるといわれています。事実よく言われているのはITバブルやリーマンショックの前、2000年や2007年でもこの逆イールドが起こっています。
逆イールドの対応策
今は日々下がっては買いの下支えが入り、反発。下落、反発を繰り返しています。しかしこれらの現象はこのような小動きではなく、何かの拍子に下落をはじめ、短期間のうちに急激に下落する傾向があります。
こんな小動きのうちはまだ危機とはいえません。
トランプ大統領も次の大統領選までは何がなんでも株式市場は維持するはずなので、トランプ大統領の発言には今後も注目です。
ただ、今世界中がお金余りで、おカネのやり場に困った投資家がかなりリスクの高い資産で運用していることもささやかれています。今回もし何らかの事情でリーマンショックのような出来事が起こったら、その下落の規模は史上最大規模になると予想されます。
今の世界経済は、上昇ではなく、政治や国や投資家の利権で取り繕った「膨張」相場であるということを改めて認識しておくべきです。
過信せず、無理ない金額を分散投資で銘柄も分散し、コツコツ積み立てることを心がけるのみです。
ビットコインが安全資産と考えられて、値上がりしている兆候がいまあるようですが、初心者も、、多少自信がある方でも絶対おすすめしません。
投資相場は大暴落した相場はチャンスです。どこまで下落するのかを見極める必要がありますが、化けの皮がはがれて実体の実力が見えてきたらそこは買いの相場です。
事実リーマンショックの時に我慢してリスク商品をもっていた投資家は今数倍の利益になっています。
そのような場面は買うと儲かる。という発想ではなく、余裕資金でなんとか頑張ってコツコツ積み立てていたら、報われた!そんな実直なきもちで今の値動きを見ながら行動をすることが今後の相場をのりきる方法なのかなと思います。
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