10年半ぶりのFRBの利下げ、今後の展望について
- 2019.08.01
- ファイナンシャルプランナー(FP) 経済
10年半ぶりのFRBの利下げ、今後の展望について
米連邦準備理事会は2019年の7月31日に米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を0.25%に引き下げました。
前回は据え置きだったのですが、ついに10年半ぶりの利下げを行いました。
このFOMCという機関の利上げ、利下げというのはとても資産運用などにおいて大きなインパクトを与えます。
ある程度、FXや株式などの投資商品の値動きを見た人はわかるかもしれませんが、例えばトランプ大統領の発言や、日銀の黒田総裁など
偉い立場にある人の発言
これを
「要人発言」
という言い方をしますが、要人発言でもトランプ大統領のツィッターの内容が、
「あ!いつものことだな。。」と市場に受け止められたら、一旦値動きは大きく振れるのですがすぐに元に戻ります。
しかし、例えば
今回のように中国への追加関税第四弾のように「あ!これは今後に大きなインパクトを与えそうだな」
と市場に受け止められると今まで上昇基調にあったNYダウ、NASDAQそしてひいては私たち日本の日経平均株価などに影響を与えます。
市場は同じ発言でも、その中身をみて、
市場への影響は軽微で、一旦下げてもすぐに戻すパターンと、この後の流れを大きく変えてしまうケースがあります。
今回のFOMCの利下げは後者であり、今後の流れに大きな影響があります。
厳密に言えばFF金利(フェデラルファンド金利)というのですが、これを
2.25%~2.50%
から
2.00%~2.25%
と0.25%利下げを行いました。
利下げをするとどのような効果がある?
利下げは何のために行うのか?を考えるときにFF金利とは何かについて知っておく必要があります。
日本もそうなのですが、アメリカも銀行同士でお金を貸し借りすることがあります。その時にかなり短期間であるのですが金利が適用されます。
厳密には銀行同士はライバルですが、お互いに勝手知ったる仲間なので、その金利は非常に激安となっています。その時に使われる金利がFF金利です。
このFF金利をもとに、銀行は企業に貸し出しをしたりする金利を決めていきます。
ということはFF金利を下げれば、銀行は企業や個人にお金を貸し出す金利を低く設定します。
FF金利が上昇すれば、逆で、銀行は企業が高く設定します。
アメリカの景気が悪いな?とFRBが判断していると、利下げを行って企業や個人がお金を借りやすくなり景気が回復するという流れになります。
??じゃあずっと利下げをしておけば、景気が良いまま行くんじゃないの?
今まで利上げなんてなんでしてきたの?ということですが、
お金を借りやすくして市場にお金が出回ってしまうとお金が余るという状況が発生します。
お金の価値がさがるので、
物価は値上がりを始めます。
値上がりをするというよりも、
同じものを買うのに、たくさんの紙幣や硬貨が必要になる。という感覚を理解しましょう。
10000円の物が10200円になるということは、たくさんのお金が必要になるという考え方です。
同じものなのに、200円分だけ余計にお金がかかるようになたので、お金の価値が下がったのです。
ずっと利下げを続けていくと、物価上昇が止まらなくなってしまうのです。
物価が上昇しているということは、物価が上昇しても物を買うことができる人がいるということです。
高く物を買うことができれば、企業が儲かる。企業が儲かると従業員の給料が上がる。という好循環なので景気がいいという状態です。
金利が上がるという状態は私たち消費者にとってはあまり望ましい状態ではありませんよね。
(資産運用をする立場では金利は上がってほしいですが、、)
景気がいい状態のうちにちょっとずつ、金利を上げておくということをFRBはやっています。2019年に入るまでは、FRBはずっと利上げをしてきたのです。
もし、景気が良いうちに金利を少しずつ上げておかなければ、万が一悪くなったときにこれ以上下げる余地がなくなってしまいます。
これまでFRBは徐々に2.25%~2.50%に徐々に金利を上げてきたので、今回2.00%~2.25%にすることができました。
当たり前のような話ですが、
もしこれがハナから金利0%だったら、、
今回のようにちょっと景気が悪くなりそうだなとFRBが判断して利下げをしようとしても、
そもそも0%のものを利下げすることはできません。
ということで、景気の良いうちに金利をジワジワあげて、景気の悪くなってきたときに備えておくという役割もFRBは担っています。
繰り返しになりますが、利下げは個人の消費を促進したり、企業の設備投資を促して景気を押し上げる効果があります。
利下げの必要性についての議論
では景気を刺激する効果がある利下げなのですが、今回については本当に利下げする必要があったのか?というのが議論になっています。
利下げをすると、原則はアメリカの株式市場が上向きになります。なぜなら、景気を刺激するので当然、アメリカの株式市場はよくなることが考えられるからです。
なぜ議論になっているのかというと、
利下げはただのトランプ大統領のわがままなのではないか?
と思われているからです。
2020年のアメリカ大統領の選挙があり、
トランプ大統領は大統領続投の意向を表明しています。
自分が今こんなに実績を出しているんだぜ!
とアピールすれば当選する可能性も大きくなります。
FRBの利下げ、利上げについては最近はトランプ大統領とのせめぎあいという問題に変わりつつあります。
本来FRBは政府の意向から独立していなければなりません。そうしないと権力の思うままに国の財政を動かせてしまうことになります。
日本なら安倍総理がこんどの選挙勝ちたいから、日銀の黒田総裁に
「ちょっと景気良くなるようなことしてくんない?」
「わかりました!」
なんていうやり取りができてしまったら、完全に国が日本を支配することが可能になってしまいます。
国の銀行はあくまでも中立で、政府がどういおうと本当に必要かどうかを判断して金利を調整する必要があるのです。
ところが今のアメリカはトランプ大統領が、FRBに公然と圧力をかけています。
なぜ利下げをしないんだ!
パウエル(FRBのトップ)は無能だ。
など、今までの大統領ではありえないくらいFRBに口先介入をしています。
ただの口先介入とはいえ、なにせアメリカ大統領の発言です。市場に大きなインパクトを与えます。
そこで催促相場という環境ができてしまいます。
今若干停滞しているものの、そうはいっても今までアメリカ市場は絶好調できていました。
こんな状況で利下げする必要があるのかどうかという点が非常に注目が集まっていました。
2019年の6月は見送ったのですが、7月は
米中貿易摩擦の懸念による予防的措置
という名目で0.25%の利下げを行いました。
パウエル氏一人で利下げ、利上げの判断はするわけではなく、多数決で決まるのですが、かなり政治の圧力を感じた結果になったのかな?
と感じずにはいられません。
次回のFOMCでもう一度利下げ0.25%を見込んでいるというのが主流派の考えです。主な流れは利下げですが、何せどうなるか全くわからないご時世です。トランプ大統領を取り巻く劇場から目が離せません。
とりあえずアメリカが利下げになると、日本にとっては円高の流れになります。
あくまでも投資は自己責任でお願いしたいですが、気持ちは円高の流れでスタンバイしておきましょう。
- 前の記事
最低賃金を上げると所得が減る現実とは 2019.07.31
- 次の記事
資産運用|資産配分の考え方 2019.08.02