最低賃金を上げると所得が減る現実とは
- 2019.07.31
- ファイナンシャルプランナー(FP) ライフプラン
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最低賃金を上げると所得が減る現実とは
最低賃金が上昇したというニュースがありました。富裕層ばかり優遇されて弱い立場の支持を集めたい政治家は、時給を上げろ!あがってよかったね!みたいなツィートをしている人が多かったです。ところが、賃金上昇をすると収入が減る人たちがいるということを知っていますか?
現在985円で最も高い東京都は、最低賃金1000円超が確実に。厚生労働省の中央最低賃金審議会が示す上げ幅目安が全国平均で3%を超え、時給900円台に乗る見通しになりました。https://t.co/sP2o8DJKHv
— 日本経済新聞 電子版 (@nikkei) July 26, 2019
ということでこんなツィートをしました。
このツィートを同時にフェイスブックにも投稿したところ、
いろいろな意見が返ってきました。
「パートさんや扶養の範囲内で給料を抑えていく主婦は働く時間を減らしてしまう。」
「その分残業代がカットされた」
「そもそも労働時間を減らされた」
ということで時給を上げれば、全員が喜ぶわけではない。。
いや本来は誰もが喜ぶはずが、企業があの手この手を使って、従業員の収入を上げないようにしているという、もはや終わっている実態が明らかになります。
賃金を上げると企業が倒産してしまうから?
賃金が上がることへの弊害として一番良く言われているのはこの説ですね。
賃金が上がるということは企業がそれなりにコストが高くなるということです。
いまよりもコストが高くなるとカツカツで経営している企業は経営を続けていられなくなります。
倒産をして、企業が減ってしまうと雇用も減って失業者が増え始める。
安い賃金でもいいから雇ってほしいという人が増える→賃金が下がる
こういうスパイラルです。
ただ、実態をいろいろ聞いてみるとこんなことよりももっと労働者側に不利益が生じることが分かってきました。
最低賃金が上がると、労働時間を減らされる
実はこのようなことが発生していることはご存知でしょうか?
最低賃金が上昇すると、企業は人件費が高騰して倒産してしまうかも知れないので、そうならないために企業はパートを働かせないように労働時間を短くするようにしてきます。
しかし、世の中は人手不足で仕事は多くて人が足りないので労働時間を短くするなどできないはずです。
企業の社員がパートのリーダーや、店舗の店長のところにやってきます。
そして、こういいます。
「今回の最低賃金の上昇により、企業の収益を圧迫しています。店長は労働時間を削減するよう、各パートやアルバイトと交渉のすること!」
以上。
トップはこのような状況を現場に丸投げをして、ただ働く時間を減らせと言ってくるだけです。
今まで時給850円だったのが、880円になりました。
しかし1日の労働時間が7.5時間を7時間に減らされたら、
時給850円×7.5時間=6375円
から
時給880円×7時間=6160円
になりますので最終的に手取りが減ることもお分かりいただけると思います。
結局、企業の圧力で
働く時間を減らされて、業務量が変わらないわけですから仕事を持ち帰ったりして、無償で働く時間が増えている。
今の働き方改革の弊害と同じようなことが起こっているわけです。
パートは時間の調整をし始める
パートさんの中でも扶養の範囲内で働いている人たちがいます。
企業に勤めている人の主婦(夫)の方などは年間103万円の収入までは税金がかかりません。また、年金や健康保険も、この収入なら主婦(夫)の配偶者の会社負担となり、本人の負担はありません。
細かいことはさておき、パートさんはこのような理由で年間の収入を103万円以内に抑えようと、経験したことが無い人にはわからないくらいギリギリのせめぎあいをしている人たちがいます。
パート間で「緻密な計算」をしているのです。
それが最低賃金の上昇によって、崩れるのでパートさんは賃金が上がっても103万円以内におさえるため、自分から働く時間を減らしにかかります。
そして結局は収入は何も変わらない、または先ほどの事例と同じく仕事を持ち帰って自分でやることになる。
長い目で見れば、103万をこえて働いた方が有利な場合もあるのですが、
今その場での手取賃金の減少の方がやはり当事者にとっては重要です。
賃金の考え方がそもそもおかしい
地域によっては時給1000円を超えたエリアもあるようです。
しかし、時給1000円×8時間×21日=168000円ここから税金が引かれて手取りは135000円
生活保護、母子家庭、23区内、子供一人なら157000円もらえて税金、医療費免除。
このように働かない人の方が有利じゃないかという人がいます。
16万8000円×12か月で年収約201万ですよ。
これで生きていけますか?
日本は最低賃金の考え方がそもそもおかしいです。時給1000円になったから、
「うおーー!!1000円なんてすごい!!」なんて言っていてはだめです。
時給1000円でも世界と比べると、賃金は安すぎるのです。
これは地方のサラリーマンも同じです。
上場企業ならともかく、中小企業は昇級などはほとんどありません。賃金が上昇していくということが、ありえないのです。
そして、退職金などはもちろんありません。
私も思います。
このような
企業は淘汰されていくべき
なのです。
時給1000円ぐらいでガタガタ言っている企業はつぶれていい。
そもそも日本は賃金が安すぎるのです。
あっちの企業がこれくらいだから、うちもこれくらいでいいやー。
というだけの話です。
よい賃金を準備するために、利益を出す仕組みをつくろう。という発想がないので、業務の改善もされないし、無駄な仕事が横行している。
社員のスキルも高まらない。
成長を希望する前向きな社員の成長意欲も満たされず、ましてや賃金も上がらない。
賃金も上がらないし成長もできない。
ならもっといい企業に転職します。となりますよね。
積極的に企業に見切りをつけましょう
私たちもこのような企業は積極的に見切りをつけて、そのような企業は淘汰されるお手伝いをすることも大切です。
企業はあてにせずに、自分で個人事業主として仕事を請け負う方法も今充実しています。
ハンドメイドで自分の商品をつくってメルカリなどで販売したり、自分のようにブログなどのIT技術を使って収益を得たり、インスタなどいろいろな方法があります。
パートなどは単純作業で楽ではありますが、今の中小企業の状況等を考えるとそう簡単にこれ以上の時給が上がるとは思えません。
今、外に目を向けるとパート以外の選択肢もたくさんあります。
クラウドワークスやランサーズといったように執筆でお金が稼げたり、アンケートや市場調査等、ネットで仕事を引き受けて、ネットで納品をしてお金が入るという仕組みもあります。
必ずしもコンビニやレストランなどの仕事ばかりではないことを知ってください。
ただ、この時も103万円の範囲内で働きたいという人は注意をしてくださいね。
この記事を書いた人
ファイナンシャルプランナー金子 賢司
これまで1000件以上の家計、住宅ローン、生命保険、損害保険、資産運用の相談に携わる。UHBなどのテレビのコメンテーターや確定拠出年金等のセミナーを毎年約50回実施。CFP資格保有者。TLC(生命保険協会認定FP(TLC資格とは))、損害保険トータルプランナー、公式HP
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