外貨建て保険のリスクと外貨建て保険のススメ
- 2019.05.27
- ファイナンシャルプランナー(FP) 生命保険
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外貨建て保険のリスクとオススメの外貨建て保険
外貨建て(がいかだて)と読みます。
以前のブログで主要生命保険会社が31年3月期連結決算を発表したというお話をお伝えさせていただきました。
ほとんどの会社が保険料収入が良好だったのですが、問題はその中身です。
法人向けの節税保険と外貨建て保険、後は買収した海外の保険会社の収益が収入の大半になります。前回は節税保険について解説というよりかは、節税保険をめぐる内情をお話させていただきました。
この節税保険は2019年6月あたりからまた販売が復活する可能性がありますが、以前ほどの節税効果はないといわれています。したがって次回の決算ではこの節税保険の効果がない状態でのスタートとなります。
そしてもう一つの収益源、外貨建て保険も近い将来同じ道をたどることになるでしょう。
ではこの外貨建て保険は一体どんな仕組みの商品なのでしょうか?
外貨建て保険とは?
払い込んだ保険料が日本円ではなく外貨で運用される保険商品です。保険料は米ドル(アメリカの通貨)、豪ドル(オーストラリアの通貨)、ユーロ(ヨーロッパの通貨)などで払込み、保険金や解約返戻金等はそれぞれの通貨で受け取ります。
円で支払うことも円で受け取ることも可能です。
外貨建て保険の種類
外貨建ての終身保険
万が一の時に遺族が保険金が受け取れる保険でその保障期間は30歳から40歳の間という一定期間ではなく一生涯保障するのが終身保険ですが、これの外貨版です。
円で払い込む場合や保険金や解約返戻金を円で受け取る場合は、為替相場によって変動をします。
外貨建て一時払い終身保険
外貨建ての終身保険は毎月保険料を支払いますが、一時払いは読んで字のごとくまとまったお金を一度に支払います。毎月30000円というように保険料を払うのではなく、今ある1000万をまとめて終身保険の保険料に充当しそれ以降は保険料の支払いはありません、
外貨建て養老保険
終身保険ではなく、保険期間があります。
一生涯ではなく、20年、30年というような期間がありこの期間に万が一のことがあれば保険金が受け取れます。満期を過ぎれば、保険金と同額の満期保険金が受け取れます。
保険期間30年間の養老保険に加入をしたとします。
亡くなった時に保険金10万米ドル受け取れる商品なら、満期保険金も10万米ドルになります。
終身保険は途中で解約しなければお金を受け取れません。なぜなら一生涯続く保険だからです。
それに対し養老保険は期間を定めているので満期があり、それを過ぎれば満期保険金が受け取れるという違いがあります。
終身保険は「身」が「終わる」までの保険なので一生涯。
養老保険は「老後」を「養う」保険と覚えると商品名も理解できると思います。
外貨建て個人年金保険
個人年金は積立貯金の外貨建て版です。万が一の時はあらかじめ取り決めた金額ではなく、それまでに積み立てた金額相当額を受け取ることになります。加入直後に万が一のことがあった場合は、保険金としては心もとない金額になってしまうことに注意が必要です。
一方これまで紹介してきた終身保険(一時払い含む)や養老保険は、保険金10万米ドル受け取れる保険であれば、加入して1か月後に万が一のことがあっても、10万米ドル受け取ることができます。
個人年金は保険料1か月分にもろもろの条件を換算した金額を受け取るだけになります。
その他、様々なバリエーションの外貨建て保険はありますが、一般的にな事例はこれぐらいでしょう。
外貨建て保険のメリットとデメリット
外貨建て保険のメリット
日本の保険よりもはるかに運用利回りが高く、元本よりも大きく上回って受け取ることができます。保険金も変動するので、当初の取り決めよりも万が一の保険金額は大きくなる可能性があります。
長期間の加入を想定していればかなり大きく資産を増やすことが可能です。
税金もメリットもあります
生命保険料控除、個人年金控除のメリットも外貨建て保険でも受けることはできます。
外貨建て保険のデメリット
円で払いこみをする場合や円で保険料を受け取る場合はその時の為替の影響を受けます。
毎月の保険料100米ドル、受け取れる保険金10万米ドルの外貨建て終身保険の事例
契約時 | 2回目 | 3回目 | |
その時の為替レート | 100円 | 90円 | 110円 |
保険料 | 10000円 | 9000円 | 11000円 |
保険金 | 1000万円 | 900万円 | 1100万円 |
このように円で支払う場合は毎月の保険料や保険金が変動をします。
ここにはありませんが、解約した時に受け取れるお金、すなわち解約返戻金も円で受け取る場合は、為替レートによっては大きく元本割れする可能性もあります。
円高ドル安・・・1ドル100円から80円になるような場合
円安ドル高・・・1ドル80円から100円になるような場合
円高ドル安になる場合は、円で受け取るとデメリットが発生する場合があります。保険金の場合も同様です。
ただし、毎月の保険料は円高になってくれれば私たちの保険料は安く済みます。
外貨建て保険はよい保険です
長々と外貨建て保険について解説をしてきましたが、外貨建て保険は基本よい商品です。ただ、お分かりいただけたと思いますが、為替レートによっては元本割れしてしまったり、思っていたよりも保険金額が減ったりとリスクが伴います。
このリスクをしっかり説明できていないので、元本割れをするなんて聞いていない!というクレームが相次いでいるのです。
営業担当がリスクを説明しきれていないだけ
全て私も見たわけではないのですが、よく聞く説明としてはちゃんとリスクは説明しているのですがでもこんなことはないので大丈夫です。で片付けているケースが多いです。
例えば、
豪ドルの商品に加入をしたとして、例えば豪ドルと円のレートが1豪ドル70円くらいまで円高にならなければ損になることはありません。
特に過去の豪ドルと円の値動きを見せることもなく、または詳しくもないのに1豪ドル70円なんて今までなったことないので大丈夫ですよ。
という説明をしているケースです。ここまで円高になって採算が合うのは20年30年と長期で保有していた場合の話です。
その途中では3円4円値動きしただけでも元本割れをしており、わかっている人は長く持っていれば大丈夫で回復して資産は増え始めると知っているのですが、リスク商品を扱ったことがない人はこれだけでも元本割れに耐えることができないのです。
一般的な保険営業のセールスは、リスクの説明をきちんとしていると思われます。各社のホームページを見てみると、外貨建て保険はセールスの対面販売で詳細説明を必須としています。
やっぱり問題は銀行窓口かなぁ・・というところです。
定期預金が満期になって、、
退職金が入ったので引き出しにいったら、、
銀行の窓口担当が外貨建て保険を勧めてくる。という流れではないでしょうか?
全員がそうではないかもしれませんが、投資信託ほどリスクもなく、資産は銀行預金、定期預金よりも高い。なんだか魅力的に映ります。魅力的な商品であることは私も同意です。
何より、お客さまが加入をして得られる外貨建て保険の手数料が魅力的なのです。
為替リスクなどの説明が不足しているケースもありますが、そもそも何の保険に入っているのかわからない、「貯金だと思っていた」というケースもあるようです。
皆さんが想像以上に説明がずさんに行われているケースも多く見受けられます。
外貨建て保険に顧客を誘導するような営業がもし、日常的に行われているとしたら・・
節税保険と同じように販売自粛になったり・
ますます販売過程の管理など申し込みに必要な書類や、顧客に対してリスクを説明したかどうかのチェックシートが導入になったりと何かしらの制約が高まっていくことになるでしょう。
保険会社もだんだん売るものが無くなり、健康増進型保険や健康応援企業に変貌する理由もよくわかります。
そしてさらにこの後も変わる様子はなさそうです↓↓
古い体制の銀行と生保お互いにつぶし合ってなくなってほしい。とある地銀は一生懸命お年寄りに1000円や2000円の保険を高齢者に飛び込みで販売しているそうな・・高齢者に1000円の保険ってどんな内容なの?全く変わる気配のない日本の金融https://t.co/uPCEAJP4uR
— オカネノカネコ (@NICE4611) June 13, 2019
この記事の著者
金子賢司(かねこけんじ)CFP資格所有者
これまでに1000件以上の家計の相談や住宅ローン、生命保険の相談に携わる。UHBなどテレビのコメンテーターや確定拠出年金、イデコのセミナー等年間50回程度のセミナーを行っています。 LINE@dli3529l Twitter @NICE4611 金子賢司 公式HP
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