令和版「持ち家」と「賃貸」どっちがいい?議論は時代とともに変わっていきます
- 2019.06.14
- ファイナンシャルプランナー(FP) ライフプラン 住宅ローン
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令和版「持ち家」と「賃貸」どっちがいい?議論
永遠のテーマではありますが、時代の流れとともにその主張の根拠についても変化が生じています。その変化についてお話をしていきたいと思います。
自分の資産になるかならないか?
持ち家の場合は、一括で購入できればよいのですが2000万~3000万の新築を購入するのに一括で購入できる人はなかなかいません。ということは金融機関からお金を借りて住宅を購入し、それ以降毎月返済をしていくことになります。
だいたい30年から35年という非常に長い期間返済をしていくことになりますが、苦労はしますが返済をすればその家は完全に自分の物になります。
その不動産は自分も住むことができますし、まだ建物に価値があって人に貸すことができれば賃貸料も得ることができます。(一般的な個人の住宅ローンは自分が住むための物なので、個人の住宅ローンを返済している間に人に貸したりするのはやむを得ない場合を除きNGです。人に貸す用途の場合は専用の住宅ローンがありますので、そちらを検討しましょう。
住宅ローンを返し終わったら自分の資産になる。その物件を人に貸して家賃収入を得たりすることもできますので、建物や土地は資産になるのは確かにその通りです。
私もつい先日までは、自宅を保有したほうがトータルの支払い額が少ないのでその方がいいと思っていました。
ただ、昔ほど建物を保有することが安泰でなくなってきているという状況が発生してきています。
持ち家のリスク
企業の終身雇用が従来ほど保障されていない
経団連の会長やトヨタ自動車の会長から終身雇用が難しいという発言が出始めました。
その後、トヨタに関しては管理職の2019年夏のボーナスを4~5%を減額することを発表しました。
いつまでも給与は伸び続けない。終身雇用をなくすということはすぐにはしないけど、企業は厳しいんだということを伝えるための「見せしめ」のような意図を感じます。
さらに、富士通や東芝などは45歳以上の社員に早期退職を求めることを公表し、この動きが企業に広まっています。
労働組合があるような社員の権利が比較的守られている世の中とはいえ、なんだかんだと私たちの雇用を取り巻く状況は難しくなってきています。
例えば年収500万の人が、3000万の家が欲しいと思い、30年や35年という返済・・いわば借金です→これを抱えてでも家を購入をしようと考えられるのはなぜでしょうか?
30年間ないし、35年間安定した収入があるから。安定した収入が見込めるからではないでしょうか?
では今述べたような、終身雇用が守られない時代、早期退職を求められもしかしたら多額の退職金は受け取れるかもしれませんがその後の収入は不安定です。
そう考えると30年、35年安定した収入が望めないのですから、
住宅ローンを抱えてしまう「住宅の購入」という手段はちょっと待った!!
ということになります。
自分の職場が今後も労働環境を維持してくれるかどうか?今までは、大手企業だから大丈夫という根拠もない安心感を持っていた人も多いかもしれません。今は大手企業でさえ、終身雇用を守ることができない時代でさらに多くの企業が「そうだそうだ!」と追随してくる可能性は十分ありますので見極めたうえで住宅ローンは利用する可能性があります。
そう考えると、私は建物を保有することは昔よりリスクは高まっていると考えます。
実際に住宅ローンを抱え、働き方改革によって残業代が減少し、返済が厳しくなっていることも表面化しています。
建物を購入するにあたって、一括現金で購入できたり、きわめて短い3年や長くても5年で購入できたらよいのですが・・ただ、住宅ローン控除は使えません。
令和の時代は賃貸の方が安全
どっちがいい悪いというわけではなく、賃貸の方が今の環境を考えると安全と考えます。
あくまでも安全です・・というだけです。
今までの建物を購入するケースの裏返しなので、おおよそ想像はつくと思いますが、
賃貸であれば、あなた明日から会社に来なくてもいいよ!ともし言われたとしても住宅ローンという借金を抱えてはいないので、家賃の安い家に引っ越せばいい。ということが簡単にできます。
住宅ローンの返済額を家賃だと思えば・・という営業トークを不動産会社はするのですが、
3000万の住宅ローンの借り入れをして、金利35年間ずっと1.5%で、35年間借りた場合、総返済額は約3850万になります。
ということは35年間で850万も銀行に利息をはらうことになります。
その850万は賃貸なら発生しません。その他、保証料、火災保険料等の諸費用も100万近い金額がかかります。
家を買わなければ1000万くらいはつかわなくて済んだ金額があるという考え方もあります。
終身雇用が守られないことが、本当に起こりつつある令和の時代だからこそ、家を購入するリスクは高まっていると考えられます。
住宅ローンを持つことで人生も縛られてしまう
住宅ローンを持つことで、一家の大黒柱としての責任が重くなり職場環境が劣悪であってもやめられないという環境になってしまうことがあります。
職場で経営者や上司が変わったり、勤めている職場が買収されたりすることで職場環境が変わりストレスを抱えたり、収入が激減してしまったりした場合うかつに仕事をやめることができなくなります。
新たな職場を求めたり、独立をするにしても住宅ローンという借金を負った状態で独立をしたりするにはリスクが高すぎます。
耐えられる範囲なら良いですが、ずっと住宅ローンを払い終わる30年、35年も大切な人生をいやな職場で過ごすことになってしまいます。
これも住宅ローンを背負うリスクと言えるかもしれません。
老後の資産が無くなってしまう・・
この話を最後にすると、一体どっちがいいんだ!となってしまいますが、
今の年金暮らしの高齢者は非常に生活が厳しいです。今後さらに年金の支給金額が低くなり、厳しくなっていくのですが、今でも厳しいのです。
貯蓄がいつ底をつくか?という不安を抱えながら生活をしている高齢者も多いのですが、そこで持ち家を売却するという手段が出てきます。
持ち家が1000万、2000万で売れて現金が手に入り、賃貸アパートに安く住むことで、今後お金の心配を当面しなくてよくなったという世帯もたくさんあります。
または介護施設に入るときに、その初期費用を自宅の売却でねん出するケースもかなり多くあります。
ずっと賃貸で過ごすと、いざというとき大きな資産がないので自分で若いうちから別の資産を育てる努力は怠ってはいけないです。
賃貸で今後も過ごしていく、という選択をもししたら家を買わないで住宅ローンという借金を負わなくてよくなり、諸費用も掛からなくなったのでよかったと思うかもしれませんが、しっかりそのお金で別の株式や金融資産などで資産を育てておく必要があります。
やっぱり買わなくていいんだ。賃貸万歳!で済ませると、長いスパンで見ればいずれ来る大きな出費で泣きをみることになります。
この記事の著者
金子賢司(かねこけんじ)CFP資格所有者
これまでに1000件以上の家計の相談や住宅ローン、生命保険の相談に携わる。UHBなどテレビのコメンテーターや確定拠出年金、イデコのセミナー等年間50回程度のセミナーを行っています。 LINE@dli3529l Twitter @NICE4611 金子賢司 公式HP
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