配偶者居住権と配偶者短期居住権について

配偶者居住権と配偶者短期居住権について

配偶者居住権と配偶者短期居住権について

民法の相続法分野が変わります!

2018年7月に民法の相続法分野が40年ぶりに改正となります。これまでの相続法では対応できなかった事例も一部カバーされる内容になっています。今回は配偶者居住権と配偶者短期居住権について解説していきます。

配偶者居住権とは?

夫に万が一のことがあり、その配偶者(妻)が夫の持ち家に住んでいた妻がいたとします。この夫婦は相続できるものはその持ち家がほとんどのケースは配偶者が困ることがありました。以下の表をご覧ください。

被相続人の遺産が建物(自宅の持ち家)(評価額2000万)+現金3000万の合計5000万円分あったとします。

以下の図では相続人は配偶者(妻)と子の2人です。法定相続分(法律で決まっている相続の割合)は1:1なので、5000万円分の資産を半分ずつ分けることになります。

じゃあ2500万円と2500万円で仲良くしましょうね。

と言えばいいのですが、よーーく考えてください。配偶者は2500万円分相続すればよいのであれば、建物2000万+500万を現金でこのケースを渡してあげればい終わるのかというと実態はそうではないのです。

配偶者居住権(現行)
出典 法務省HPより

建物を相続して自分の物になったはいいのですが、配偶者はその後生活をしていかなければなりません。今の時代は女性の方が長生きの時代なので、長生きすればするほど生活費が必要になってきます。

年金だけでは一般的な生活をしていくことも難しいため、貯蓄を取り崩していくことになります。しかし貯蓄を取り崩しながら、あと何歳まで生きるのか?並行して生きている間、貯金は持つだろうか?そんな不安を実は今の高齢の方は抱えています。

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そのような最中、ご主人を失い、家をもらったのはいいけど今回のケースでは受取った現金はたった500万円。

一方残りの現預金2500万は子どもが受取りました。

じゃあ配偶者が現預金を受取って、建物と500万を子どもがうけとるという前述と逆のケースようにすればいいのですが、なかなかそうそう円満には進みません。

子どもは家を持っていたり、賃貸アパートにせよマンションにせよ、おそらく自分の済むための家は持っているはずです。

そのような状態で家を相続されても、ぶっちゃけ・・

家2つもいらないよ、今欲しいのはお金だよ。

となる可能性も高いです。

その相続した物件で民泊や賃貸など貸し出して家賃がもらえるような物件なら子どもも建物を相続してもいいかなと思うかも知れません。

しかしそのような物件は立地が良くなければ民泊や賃貸をしようと思ってもうまくいきません。空室に心を痛めることになる可能性も高いです。

ということはやっぱりよっぽど収益がある物件でなければ、若い人(子)は建物を相続しても困ります。

配偶者(妻)は建物を相続しなければ、住む家がなくなってしまいます。

ということでこのようなケースではやはり配偶者が建物を相続します。建物を相続して住む家をキープできたのはいいのですが、相続できた現預金が少なく今度は生活費に困ることになってしまいます。

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そんな問題を解決するのが配偶者居住権です

配偶者居住権とは終身または一定期間、無償で住み続けられる権利です。

この2000万の建物を、配偶者居住権と負担付き所有権の2つに分割します。以下のケースでは配偶者居住権1000万と②負担付き所有権の1000万に分けます。

負担付き所有権とは、配偶者居住権がなくなれば土地・建物を自由に処分できる権利です。

以下の表では配偶者が配偶者居住権1000万、子が負担付き所有権1000万を相続しました。これを2つにわけることで、配偶者は建物を実際に2つに分けるわけでもなく建物を1000万だけ相続したことになり、

残りの法定相続分1500万円分を現金で受け取ることが可能になります。

したがって、配偶者は今までの民法では建物2000万と現金500万を受取っていたのですが、

新しい法律では建物を1000万円分相続し、現金1500万円を相続することが可能になり、住み家も相続でき、なおかつ当面の生活費も入手することが可能になったのです。

配偶者居住権メリット

居住権の価値をどのように判断するか?

このケースでは配偶者居住権と負担付き所有権を1000万ずつに分割したのですが、この割合は任意で決められるわけではありません。

計算式は複雑なので、ここでは割愛します。

ただ簡単にいうと、

①居住すると想定される年数

②建物の築年数

この2つで判断されます。

まず①についてですが、

平均余命をもとに計算をされるのですが、建物を相続する人の年齢が若い人ほど相続する人にとっては土地、建物の価値があるものとみなされるので、居住権の価値は高くなり、負担付き所有権の割合は減っていきます。

②の築年数については、

建物が古いほど、配偶者の亡くなった後に利用価値がなくなるので居住権の価値が高くなり負担付き所有権の割合は低くなります。

配偶者短期居住権とは?

夫が亡くなって、配偶者と子どもが相続人となるのは同じですが、子どもが建物を相続した場合は、持ち主である子どもは配偶者を追い出すことができてしまいます。

これでは配偶者の地位が守られないので、遺産分割によって、

居住建物の帰属が確定した日

または

相続開始の時から6ヶ月を経過する日

のいずれか遅い日までの間

は被相続人の配偶者は居住建物の所有権を相続によって取得した人に、無償で使用する権利を主張することができます。

配偶者居住権、配偶者短期居住権の注意点

①建物の修繕ができる

②建物の修繕は自己負担

③居住権の譲渡、売却はできない。したがって、配偶者が高齢者施設に入居する等の理由でその建物に住まなくなったとしても、居住権の譲渡、売却はできない。

④全ての相続人の承諾がなければ、建物を第三者に使用させることができない。

⑤配偶者は善管注意義務に基づいて建物を使用しなければならない