公的年金の財政検証はいつ?「所得代替率」について

公的年金の財政検証はいつ?「所得代替率」について

公的年金の財政検証はいつ?「所得代替率」について

年金制度の定期検診ともいえる公的年金の財政検証がまだ行われません。

人口構成や経済情勢を鑑みて、将来の年金財政や収支見通しを公表する財政検証。財政検証は5年ごとに開催される予定で以前は2014年6月3日に開催されているため、今回はそろそろ開催されるはずがまだ日程の予定さえもわからない状況が続いています。

所得代替率に注目

財政検証がなぜ遅れているのかという予想についてはあとで触れるとして、いずれにしても近いうちにこの財政検証は必ず公表されます。

その際に注目したいのが所得代替率が「将来」はどうなるか?

ということです。

所得代替率とは?

公的年金の給付水準を示す数値。モデル世帯(夫婦二人)の年金月額が現役世代の男性の平均月収の何パーセントになるかで示す。

[補説]モデル世帯は、サラリーマンの夫が平均賃金で40年間働き、妻は40年間専業主婦の世帯。現役世代男性の平均月収約34万8000円に対し、モデル世帯の年金額は21万8000円で、所得代替率は62.7パーセントと試算されている(厚生労働省・平成26年財政検証結果より)。

コトバンクより引用

モデル世帯の年金額21万8000円÷現役世代男性の平均月収34万8000円=約62.7%ということです。

もう少し細かくこの数値をツッコムと、この現役世代男性の平均月収が一体いくらを差しているのか?という点ですが、ボーナスを含めた平均手取り月収が上記事例では34万8000円になるということです。

また年金受取額21万8000円は厚生年金(サラリーマン世帯)の場合で

国民年金(自営業者)になるともう少し分子が少なくなる

ということも考えておく必要があります。

pension

目標代替率についても知っておきましょう

英語ではIncome Replacement Ratesと言いますが、退職後に生活水準を落とさない所得(支出)レベルはいくらか?という割合になります。

目標代替率は年収が高い人ほど、退職後生活水準を落とせる余地が大きい余地があるので、所得が高ければ目標代替率は60%くらいといわれています。

たとえば退職直前に手取り所得が1000万だった方がいたとしたら、退職後は1000万×60%毎年600万の所得があれば、生活水準は落ちますが生きている限りはやっていけるという金額になります。

この手取り所得が低ければ低いほど、カツカツで生活していたので、退職後は生活水準を落とすのが難しくなり目標代替率は80%くらいといわれています。

手取り所得400万だとしたら、320万が退職後必要でその後夫婦が生きている限り毎年必要になるということです。

まだ日本ではあまり議論されない目標代替率なので、所得がいくらが目標代替率は何パーセントになるかという目安は細かくは提示されていないのですが、2014年の全国消費実態調査から分析した目標代替率は72%と言われています。

その72%のうち、公的年金が占める割合は44%と言われています。残りは最近イメージが悪い言葉になりましたが、自助努力ということになります。または会社の退職金なども含まれます。

pension

財政検証はなぜ遅れている?

ただそうはいっても財政検証で注目されるのは所得代替率なので、まずはこの言葉を抑えておきたいところです。

前回の厚生労働省の発表した見通しでは、ケースCで厚生労働省が想定している比較的楽観的な条件で算出したケースです。悲観的なケースE等もありますので興味のある方は参考にしてください。

こまかい数値がありますが、一番見ていただきたいのは

棒グラフのしたあたりにある各年度の所得代替率の数値です。平成26年は62.7%でしたが、将来的には51%になり、その後キープするという内容になっています。

こちらのグラフをご覧ください。

所得代替率
厚生労働省HPより引用

平成31年を見てみると緑のグラフがもらえる年金金額、赤が生涯平均月収です。20.8万÷34.7=約60%という見方をします。

平成42年(もう令和になりましたが、、)は23.9万÷42万なので56.9%です。

所得がこんなに増える想定で資産されているのも怪しいですよね。平成62年度だとしたら59.7万円になります。月収そんなにもらえるなんてどんな資産ですか?と思いますよね。

これは前提が物価上昇率1.6%、賃金上昇率1.8%、運用利回り3.2%という前提で試算しているパターンだからです。

もっと悲観的なシナリオもありますし、楽観的なものもあります。

でもこのケースC真ん中(中位)の前提にしても嘘だろーーという前提です。

物価上昇率1.6%・・・全く物価上昇率は上がっていません。

賃金上昇率1.8%・・・一部業種だけで、全体で賃金上昇1.8%なんて全くお門違いの数字です。

運用利回り3.2%・・・日本人、、まだそんなに運用してません。

今回の財政検証の結果が出せないのはおそらくこの結果が悪化することが考えられること。

そして、現在の米中貿易摩擦の影響で運用環境が非常におもわしくなく、私達の年金を運用しているGPIFという期間がおそらく損失を出している可能性が高いです。

GPIFは定期的に運用結果を報告していますが、毎年通常7月上旬に公表します。これもおそらく今回は遅れる可能性が高いのはなぜかというと、「参院選が近いから」です。

結果を公表することが「参院選に悪影響をもたらす」という内容になっているためにまずは、財政検証が例年よりも遅れているという見方があります。

またGPIFの運用結果が参院選までに行われないなら、年金運用が厳しい結果になっているというように考えたほうがいいでしょう。

ただ、米中貿易摩擦で機関投資家も運用するには厳しい環境にあります。GPIFは長い目で見れば、資産を大きく増やしているということも忘れてはいけません。マイナスになったときだけマスコミや野党が騒ぐので、本来の働きが見過ごされています。

GPIFは年金運用でプラスになった分を取り崩して、厳しい年金財政に充当しながらも長い期間をかけてさらにプラスを出している離れ業をしているという点を私達も認識する必要があります。

今後の年金財政を国がどのように考えているのか、財政検証に注目です。