GPIFの外債投資への拡大で日本人が考えておきたいこと
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GPIFの外債投資への拡大で日本人が考えておきたいこと
現時点でもリスクの高い運用をしているGPIF
私たちの公的年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が外国債券の運用を拡大する予定です。
GPIFの運用資産は2019年6月時点で160兆6000億円と言われています。これだけの金額を運用しているわけですが、内訳は以下のような内容になっています。
第一四半期(2019年6月末 | ||
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資産額(億円) | 構成割合 | |
国内債券 | 432,620 | 26.93% |
国内株式 | 377,642 | 23.50% |
外国債券 | 290,030 | 18.05% |
外国株式 | 424,606 | 26.43% |
短期資産 | 81,788 | 5.09% |
合計 | 1,606,687 | 100.00% |
国内債券や国内株式、外国株式、外国債券などを総称して資産という言い方をするのですが、基本ポートフォリオ(資産配分)は国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%と決まっていますが、
各資産ともにきっちりその比率ではいけないわけではありません。
例えば国内債券は2019年6月末現在では基本35%ですが26.93%です。この比率は国内債券についてはプラスマイナス10%までは許容されています。
各資産ともにこのプラスマイナス幅は決まっており、国内株式は基本25%に対してプラスマイナス9%、外国株式は基本25%に対してプラスマイナス8%です。
そして今回取り上げる外国債券は基本15%に対してプラスマイナス4%まで許容されています。2019年6月現在は上記表にもあるように、18.05%で基本15%で4%の余地があるので19%まで認められるにしてもあと1%と迫ってきています。
現状でも国内株式と海外株式という比較的リスクの高い資産が、50%ということで、私たちの年金をそんなにリスクの高い商品で運用するなんて!!
と批判が出ています。
しかし、、GPIFは通算ではかなりの運用益を出しています。
2001年~2019年第一四半期までで年率3%で運用をしていて、累積で約66兆円の収益を出しているんです。もちろんその間には、市場の環境変化によって運用実績がマイナスになることがあります。
四半期ごとの実績などで切り取れば、GPIFの運用益はマイナスになることもあります。
プラスになっても特に騒がれず、選挙が近い時期にマイナスをだすとたたかれるというGPIFは非常にかわいそうな人たちなのです。
そうはいっても、私たちの年金160兆円分をマスコミを始め、多くの人の目にさらされながら、国内と外国の株式というリスク資産を半分も抱えている資産配分で収益を出しているのはものすごく優秀な実績です。
投資をしている人ならこのすごさが分かるはずです。
外国債券というリスクの高い資産をなぜ増やす?
海外債券の次にリスクの高い資産が国内株式、国内株式に次いで、またはそれに匹敵するリスクを含んでいる資産が外国債券なのです。
なぜ外国債券の比率を増やすのでしょうか?
実は日銀のマイナス金利政策が影響しています。実は今、国内債券は利回りはマイナスなんです。簡単に言えば運用商品で資産を増やすはずが、この国内債券をもっているとその手数料で元本割れしてしまうのです。
国内債券は安全な資産と言われており、生命保険会社や金融機関が大好きな運用商品なのですが、国内債券は持っているままでは手数料が引かれて、それだけで資産が目減りしてしまいます。
ちょっと難しいのですが、債券という商品は金利が下がると価格が上昇します。この債券価格と金利の関係について詳しく知りたい人は逆イールドの記事を参照にしてください。
金利が下がれば、価格が上がるので売却してしまえば収益が出るのですが、GPIFというのは規模が大きいので売り買いをすれば市場価格にも影響を与えてしまい、機動的に売買ができません。
従ってGPIFはうかつに売り買いはできないので、国内債券については保有しているだけではマイナスになってしまうので、ひいてはこれを抱えていると私たちの年金が目減りしていくという構造になってしまっているのです。
GPIFは資産運用は安全に運用するという方針から、長期で保有して、利息や配当で収益を出すことを重視しています。
そこで今回の外国債券の比率を拡大するにあたっても、
ただ単純に外国債券を増やそうとしているのではなく、
為替ヘッジ付きの外国債券を国内債券扱いにすることで、少し外国債券の余地を増やそうとしているのです。
すでに2019年3月末時点で為替ヘッジ付の外国債券が1兆3000億円あり、これもふくめて外国債券の上限はあと1%だったのですが、これを国内債券とみなせばもう少し普通の(ヘッジなしの)外国債券が買えるよね。という理屈です。今回の外国債券の比率拡大というのはそういう意味です。
GPIFはとにかくその規模が大きいので、為替に影響を与える可能性はありますが影響は限定的と考えます。
GPIFの運用から日本人が学ばなければならないこと
日本国債が安全だと言われていますが、実は持っているだけでは利回りはマイナスなのです。
日本人は貯蓄大好きです。
増税するといえば、でてくる発想は駆け込み需要位です。
貯蓄をしても、物価上昇局面では自分のお金の価値が目減りしている。いわゆるインフレリスクが発生することを知らなければなりません。
今は日本は人手不足により人件費が高騰し、間違いなくインフレに向かっています。お金の価値が、下がっているのです。目に見えて損失が発生していないので、気になっていないだけです。
運用に例えれば、銀行に預金をしておくと毎月微妙に損失が発生している状態です。
インフレリスクに多くの日本人が気が付いて、リスクのある資産で少しでも資産を増やす発想にならないと、日本全体の資産が縮小していってしまうのです。
日本を代表するGPIFという運用期間が、安全資産だといって持っているだけでは損失が発生するものもあるんだよということを教えてくれたのです。
今回のGPIFの外債購入の検討という判断は、
安全だと思っている商品だって長い目で見ればマイナスになっているかもしれないよ。
少しリスクのある資産でやらないと、プラスにならないよということを教えてくれたのです。
今回のGPIFの動きは投資をあまり勉強せずに貯蓄に走る日本人も学ぶべきことが多いと思います。
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