年金を払いたくない|年金に関する損得アレコレ
- 2019.05.15
- ファイナンシャルプランナー(FP) 年金、健康保険
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年金を払いたくない|年金に関する損得アレコレ
年金に対しての話題が無い日はほぼ皆無である。それにもかかわらず、その内容について詳しく見ている人ははたしてどれくらいいるだろうか?
よくある年金に関する議論について、ひとつずつ考えていきたい。
年金は払わない方がいい
個人事業主に意外と多い。サラリーマンは会社から給与天引きで差し引かれるので、とくに疑問も感じない。下手をするとこの差し引かれている金額が一体何なのかも理解していない人も多い。
かくいう筆者が32歳でファイナンシャルプランナーという仕事に触れるまで、給料で引かれているものが一体何なのかを理解していなかったのだから。
年金を払わないというのは論外
これは国に対して、年金を払わないとは何事か!という正義感からではない。
年金は老後の生活を賄うだけのものではないということをまだ知らない人が多い。
年金には、「老齢年金」、「遺族年金」、「障害年金」という3つの年金がある。
老後年金がもらえるかどうかという議論をしているのは、あくまでも「老齢年金」に関してであって、「遺族年金」と「障害年金」についてはあまり認知されていない。
「遺族年金」とは収入の柱となるものが亡くなった時に、その遺族に一定の年齢や続柄に該当するものがいる場合はその遺族に、決められた金額が支払われるというものである。
その他、個人事業主かサラリーマンか、収入の柱が男性か、女性かで大きく受取れる金額が異なっているので注意したい。
これは特に私達が加入申込しなくても、保険料さえ支払っていれば将来ずっと年金を受取り続けることができる。
「障害年金」についても同様で、一定の障害状態に該当したものはその後将来までずっと年金を受取ることができる。
要件は保険料を一定期間納めていること。
この一つだけ満たしていれば、「老齢年金」、「遺族年金」、「障害年金」は保険料を納める金額や期間によって差はあれど、ずっと将来年金を受取り続けることができる。
毎月保険料さえ支払っていれば、困ったときにお金が一定額おりてくる。保険としての機能を持っているのである。
この日本の年金制度は、民間のどの保険商品よりも万能である。
これだけの保険を民間の保険で用意するのは困難である。一生涯年金で受取れる保険や亡くなったら年金形式で生活費を一定額もらえる保険、障害状態になったら年金形式で一定額もらえる保険。
これだけの保険をそろえるためには日本人はとてつもない保険料を民間の保険会社に毎月払わなければいけなくなるでしょう。
そういう意味で、
年金が払い損と考えるのはいささか合理的ではないと考える。
年金は繰上げ支給がお得
今はまだ固定ではない世代が存在するが、いずれはほとんどの国民が65歳から年金支給開始となる。
この年金を前倒しにすると最大で30%本来の年金額から削減されるが60歳から受取れる「繰上げ支給」という制度が存在する。
逆に支給開始を最大42%本来の年金額より増額する代わりに70歳から年金の支給開始をすることになる「繰下げ支給」という制度も存在する。
これは果たしてどちらが良いという議論をよく見かける。
繰上げ支給を選択する立場としては、いつ万が一のことが起こるかもわからないのでもらえるうちにもらってしまおうという考え方。本来の年金よりも減るが、今は退職後も働くことが珍しくない時代なので労働で足りない生活費は補えばいい。
これが繰上げ支給を主に選択する人の主張の主とするところである。
先に述べておくが、筆者は繰上げ、繰下げどちらがいいということについて明確に返答をすることはしていない。それぞれ、心がけていかなければいけないことがあるからである。
繰上げ支給を選択した場合は、足りない生活費は労働で補えばいいということであるが、将来そのような単純作業が労働として残っているかどうかが問題である。
AIやロボットの存在である。レジや物の仕分け、いずれ自動運転になればタクシードライバー等も人間の存在は不要になる。文句も言わず、24時間働き続けてくれる方が、経営者としてはありがたい。
安易に現時点から、働けばいいと将来のライフプランに組み込んでいくことは非常に危険である。どのような業種が残るのか?どのような業種が伸びるので、生活費を稼ぐにはこの業種の学びを深めておくというような活動は必須になるであろう。
繰下げ支給についても同様で、今後は75歳まで繰下げができるようになる議論もされているがおそらく70歳まで支給開始を遅らせれて42%増額をさせることができれば、日常生活で生活費が不足することはなくなる人も多いのではないだろうか?
ただこちらの場合は65歳から70歳まで労働や資産運用の利息でもない限りは無収入の期間があるためその無収入の5年間、60歳退職なら10年間をどうやって持ちこたえるかが重要である。
課題は繰上げ支給の時と同様で、労働で働いて補うにしても適度な仕事があるかどうかが問題である。
こちらの場合は、無収入なので労働で収入を得なければいけない期間の収入は繰上げ支給を選んだ人よりも多く稼がなければならない。または相当な金額を用意しておく必要がある。
「繰上げ支給」、「繰下げ支給」いずれもメリットとデメリットはある。
早いうちに対策を立てて、労働収入がなくなってしまうことも考えて今から貯蓄なり可能であれば運用をして積極的に増やす努力をすることをおすすめする。
年金制度は破たんする
可能性としてはなくはないと考える。しかし、破たんした時のインパクトがあまりにも大きくなるが故、国としては何が何でも制度は維持するであろう。
年金制度は世代間扶養といって、今現役世代(働いている世代)が払っている保険料プラス税金で今の高齢者の年金をまかなっているという仕組みで動いている。
以下の表の緑のグラフを見てほしい。
一人の高齢者を支えるのに、何人の現役世代が必要となるかを表している。
平成32年で現役世代2人で1人の高齢者を支えるようになる。
そしてその傾向は変わらず、2065年には1.3人で一人を支えることになる。段階の世代の高齢化に伴って、年金財政は改善するという楽観論者もいるが、この結果をみると年金財政は改善傾向に向かうことがない。
年金制度が改悪傾向になる可能性が高いため、個人個人が備えてより賢く合理的にお金を活用していく必要性が増してくることは必然と言えるだろう。
年金に関しての損得について
日本の年金制度は、老後の年金だけでなく配偶者の万が一に備える機能や障害状態になったときなども非常に大きな一助となる制度。払わないのは自分で自分の首を絞めることになるので注意が必要。
繰り上げ支給、繰り下げ支給の議論については自分なりに、現役世代のなるべく早い時期に自分なり専門家に相談をして、不足分については貯蓄なのか運用なのか、今後厳しくなる労働でまかなっていけるのかを熟慮して決める必要がある。
年金制度は、国としては破綻にはさせないがきわめて心もとない制度になっていく可能性が高い。ますます合理的にお金を使い、時間を味方につけて準備をしておく必要がある。
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