年金現状水準には68歳まで就業が必要|30年後に2割目減りすることについて

年金現状水準には68歳まで就業が必要|30年後に2割目減りすることについて

年金現状水準には68歳まで就業が必要|30年後に2割目減りすることについて

ようやく2019年8月末に財政検証が発表になりましたね。

6月8日に以下のようなブログを書きました。この時点でそろそろ発表になってもよいということだったのですが、選挙前だったこともあり、発表が遅れていました。そして発表になったのが、8月27日でした。

所得代替率という言葉も以下のブログを参考にしてください。

おそすぎでしょーー何かあったの?と思わざるを得ません。

しかし、今回の財政検証は比較的ストレートに危機感をあおってきたなという印象でした。

マスコミの表現の仕方の問題かも知れませんが、事実は事実です。

それぞれ見ていきたいと思います。

年金現状水準維持のために68歳までの就業が必要

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月で年金20万を受け取れる夫婦がいたとします。(厳密には年金は2か月に1度の受け取りですが。。)

毎月年金額が20万でも、カップラーメンやら飲料などがじゃんじゃん値上がりしたら実際に毎月の年金額20万円のお金の価値がさがっていることになります。

ということは、年金をもらっている人は物価が上昇するのと同じくらい、年金額も上げてもらわないと年金の価値が減ってしまうのです。

ところが、物価上昇に完全に追いつくように年金額も上昇させてしまうと、国の財政が破綻してしまいます。ということで物価が上昇しても、年金の上昇は一定のところで抑えるマクロ経済スライドという仕組みがあります。

これだけ聞くとけしからん!なんなんだマクロ経済なんちゃらとは!

と思うかも知れません。

ところが、物価下落局面ではどうでしょうか?物価が上昇したら年金も一定率で上げるのですから、物価が下落すれば年金も一定率で下がることになります。

そんなの嫌じゃないですか?

ということで、マクロ経済スライドは物価が下落した時も年金の下落も一定のところで収まるようにできています。

物価上昇の時だけ、年金も同じように上昇しないなんて、年金制度は詐欺だ!!なんていわれてしまうのです。

ということで長くなりましたが、要するに昔の人よりも今の人の方が年金水準が下がっています。

今年65歳になり、年金支給が始まった人と同じ水準の年金をもらうためには、68歳と9カ月働いて、年金も65歳に受け取らずに遅らせる(繰下げ支給)をすることでようやく今の現役世代は追いつけるのです。

繰下げ支給とは、年金65歳以降受け取れるはずの月からひと月分、後ろにに遅らせると0.7%年金が増額するという仕組みです。これを使ってようやく今の65歳から受け取る人と年金額がトントンになるという計算です。

これがまず68歳までの就業が必要とされている内容になります。

30年後に年金が2割目減りするという話

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厚生労働省は5年に一度の 年金制度の定期検診ともいえる公的年金の財政検証を発表しました。その中で所得代替率について言及している下りがありました。

所得代替率とは

公的年金の給付水準を示す数値。モデル世帯(夫婦二人)の年金月額が現役世代の男性の平均月収の何パーセントになるかで示す。

[補説]モデル世帯は、サラリーマンの夫が平均賃金で40年間働き、妻は40年間専業主婦の世帯。現役世代男性の平均月収約34万8000円に対し、モデル世帯の年金額は21万8000円で、所得代替率は62.7パーセントと試算されている(厚生労働省・平成26年財政検証結果より)。

コトバンクより引用

上記は平成26年度のデータで定義しているので若干異なっていますが、

モデル世帯年金額21万8000円÷現役世代男性の平均月収34万8000円で割れば約62.7%になるということです。

単純に言えば現役世代の平均月収が100万で所得代替率62.7万なら、62.7万円の年金がもらえるということになります。現役世代の収入をどれだけ年金で補うことができるかを数値化したものです。

所得代替率を理解したところで以下の表をご覧ください。

以下の表は厚生労働省が2040年代から年金額が月額で一般的な世帯でどれぐらい変化するかを表にしたものです。

年金支給水準は一般的なサラリーマンのご主人と専業主婦の妻の2人で受け取れる年金の厚生年金の方のモデルケースです。現在は22万になっています。

全部で6パターンのシナリオを用意していますが、3つ(標準、高成長、マイナス成長)のシナリオをピックアップします。

経済が標準の状態で推移した場合、高成長だった場合、マイナス成長だった場合ということです。

現在標準高成長マイナス成長
経済成長率0.9%0.4%0.9%-0.5%
物価上昇率0.7%1.2%2.0%0.5%
所得代替率61.7%50.8%51.9%36~38%
年金支給水準22万※24万26.3万積立金が枯渇

このままの流れで行けば、標準が24万だから将来は年金支給水準は今の22万より増えてるじゃん!!

やったー安泰と思ってはいけません。この標準はかなり楽観的な数字になっています。

所得代替率は高ければうれしいはずです。ところが現在61.7%ですが、標準シナリオの所得代替率では50.8%に下がっています。

これはなぜなのかというと

物価上昇率が標準のシナリオでは1.2%になっています。

それにともなって賃金も上がります。賃金は上がるのですが、将来の年金額はそんなに増えないということを表しています。

今一度所得代替率の計算式を思い出してください

所得代替率の計算
モデル世帯年金額21万8000円÷現役世代男性の平均月収34万8000円で割れば約62.7%になるということです。

と先ほど言いました。ということは月収が増えれば分母が増えます。ということは21万8000円がそのままで、現役世代の男性の平均月収が50万に上がれば所得代替率は43.6%に下がります。

改めて言いますが収入は上がるけど、将来の年金額が大して伸びないということです。

そして、さらに現在と標準を比較すると、物価上昇率が異なっています。

冒頭に同じ月額22万でも100円のものが102円になったら、現金の価値が目減りするといいました。

ということは確かに標準の年金額は24万で現在より増えていても、物価上昇率を加味して考えてみると実質は約18万・・現在の22万と比較して2割減とされています。

これが2割減と言われている根拠です。

ということで標準シナリオの※24万は実質18万!・・・目減りしています。

マイナス成長になってしまえばもう、2040年どには年金制度は枯渇してしまうということですし、所得代替率が50%を切れば国として年金制度の

「抜本的改革」

を予定しています。

そう考えるとこの財政検証はギリギリ50%切らないように都合の良い数字でシナリオを作っているだけ・・とも解釈できます。

老後の対策

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もう国を責めるのはムダです。もう人が減って年金を納めるひとが減って高齢者が増えているのですから、財政が苦しい→年金が減るのは当たり前なのです。

先日の健康保険の自己負担が増える可能性についての記事でもお話しましたが、みんな自分が良ければいいと思って生きている限りは、財政は年金にしても健康保険についても破綻の道を突き進んでいくのは仕方ないことと思わなければいけないのです。

国の財政がひっ迫しているんですね。私は頑張ってはたらきますので、私は年金はいりません。国の年金財政に役立ててください・・なんていう人がいればいいのですが、そんな人果たしてどれだけ日本にいるでしょうか?

こういう人が増えない限り、人口が減っているのですから年金財政が苦しくなり、減らされるのは当たり前なのです。

そもそもはらわなければいいじゃん・・

と思うかもしれませんが、この年金制度の仕組みの優位性を知らずにこのようなことを言っている人が、自分で年金を用意するようなことができるわけがないのです。

日本の年金制度がどれだけ恵まれているかを知っていれば、年金なんて払わなくていいなんていう選択肢を選ぶはずがないからです。

払わなくていいと思っている人は、高い確率で老後破綻をすると考えてください。

まずはライフプランを作ったり、年金定期便をチェックして自分が、または自分の世帯がどれくらいの年金額をもらえるのか知ることからスタートです。

年金だけでは通常の生活費が足りなければ長く働くか、副業か資産運用です。

これらの行動をした方がいいという考え方では弱いです。

しなければならないと思っていてください。

文句を言うよりもまずは行動です。身体が動くうちに一歩将来に向けて動き出しましょう。

この記事の著者

金子賢司(かねこけんじ)CFP資格所有者

これまでに1000件以上の家計の相談や住宅ローン、生命保険の相談に携わる。UHBなどテレビのコメンテーターや確定拠出年金、イデコのセミナー等年間50回程度のセミナーを行っています。 LINE@dli3529l Twitter @NICE4611 金子賢司 公式HP