離婚時年金分割とは
- 2019.08.27
- ファイナンシャルプランナー(FP) ライフプラン
離婚時年金分割とは
平成19年4月1日以降に離婚をした場合、婚姻期間の厚生年金保険の標準報酬額。。すなわち保険料納付記録を夫婦間で分割するための制度です。
65歳以降もらえる年金額を夫婦だった2人で分け合うわけではないことに注意が必要です。
離婚時年金分割には2つあり、
3号被保険者(厚生年金の配偶者で扶養の範囲内の所得である人)が請求できる3号分割制度
と
当事者(夫婦だった人たち)の一方で請求できる3号分割制度というものがあります。
①合意分割制度
②3号分割制度
標準報酬とは?
標準報酬とはなんでしょうか?私たちが将来受け取る厚生年金の金額は、現役時代(厚生年金保険料を払っている期間)に収入が高い人ほど金額が大きくなります。
この金額の基準となる金額のことを標準報酬といいます。
ちょっと詳しく説明します。以下平成31年4月度にでた北海道の数値を基準に計算しています。
月の報酬が例えば19万5千円だったとします。お勤めの方は、厚生年金保険料ということで18.3%(令和1年8月現在)を将来年金を受け取るために納めなければなりません。厳密には給与天引きになります。19万5千円×18.3%=35685円が厚生年金保険料(厳密にはこれを会社と社員がそれぞれ半分ずつの負担になります)になり給与から引かれる・・はずなのですが実はちょっと違います。
では20万4千円はどうなるのかというとこれも20万4千円×18.3%での計算とはなりません。
実は19万5千円以上~20万5千円未満は20万円とみなしますよ、これに18.3%をかけてくださいね。
ということで、20万×18.3%=36600円になります。
19万5千円だろうと、20万だろうと、20万100円だろうと、、
19万5千円以上~20万5千円未満の報酬の方は、20万とみなします。
この20万とみなしますよというこの20万を標準報酬といいます。
標準報酬は都道府県ごとに決まっていますのでぜひ興味のある方はご覧ください。
健康保険料も厚生年金も全部この表で決まっているんですよ。
分割できるのは報酬比例部分だけ
ということで、もうお気づきの方も多いと思いますが、報酬が多ければ多いほど払う厚生年金保険料が大きいということがお分かりいただけると思います。
標準報酬20万の人よりも、98万の人の方が厚生年金保険料が高いのは一目瞭然です。20万×18.3%と98万×18.3%という計算をするためです。
じゃあ、報酬が高い人はただ高い保険料を払うだけなのかというとそうではありません。厚生年金の将来の受取額を計算するのは大変複雑なので、ここでは割愛しますが、
たくさん現役時代に収めれば、将来もらえる金額も大きくなるのは間違いありません。
報酬に比例して金額が変わるという意味で、厚生年金は報酬比例と言われます。
厚生年金の報酬比例部分というのは実はそういう意味です。報酬が多い人ほどたくさんの保険料を払うので、将来もらえる厚生年金の金額も多いということです。
一方厚生年金に対して国民年金は、毎月払う金額は全員一律(免除などを除きますが)です。毎月払う国民年金保険料を何年間払ったかで将来の受取額が変わってきます。
3号分割にしても、合意分割にしても、分割できるのは報酬比例部分だけだということに注意してください。
また、請求できるのは離婚をした日の翌日から起算して2年以内です。
合意分割と3号分割についてそれぞれ説明していきます。
合意分割
平成19年4月1日以降の離婚の場合、婚姻をしていた当事者からの請求で標準を分割することができます。元ご主人の標準報酬が20万ならこれを夫婦で分割できるということです。
この分割割合は当事者間の合意で決められるのですが、合意が成立しなければ裁判で分割割合を決められます。ただその際も上限は2分の1になります。
平成19年4月1日以降の離婚に該当していれば、過去の婚姻期間にさかのぼって請求することは可能です。
3号分割
平成20年5月1日以降の離婚の場合、国民年金の第3号被保険者(サラリーマンの奥さまで扶養となっているのが第3号被保険者だと覚えていただいて大丈夫です)だったものからの請求により標準報酬を当事者間で分割できる制度です。
こちらは平成20年4月までの婚姻期間しかさかのぼれません。
請求できるのは第3号被保険者のみで、分割は2分の1で分割する方法しかありません。
第一号改定者、第二号改定者
標準報酬額の多いほうを第一号改定者、少ないほうを第二号改定者といいます。
標準報酬を分割をするというのは、多いほう(第一号)から少ないほう(第二号)へ分割をするのが原則です。
例えば夫婦で奥様が専業主婦だったような場合、ご主人が厚生年金をずっと払い続けていて将来も2人で暮らしていければご主人の厚生年金+奥さんの国民年金(基礎年金)で老後は安泰だったとします。
ところが離婚をしてしまいました。奥さんの側はご主人の厚生年金の恩恵を享受することができないのです。一見当たり前ですが、ご主人のサラリーマン生活を支えるのに、子育てやお弁当や学校の送り迎えをしてきたのではないでしょうか?それらがあって、ご主人は働いて厚生年金を払う生活ができていたのです。
ご主人の厚生年金は2人で作り上げてきたもの・・
なのに、離婚をしたら全部ご主人にもっていかれた、、奥様は国民年金(基礎年金)のみ。。これでは影で支えてきた苦労が全く加味されていません。
このケースで言えば奥様も別れてもその辺の苦労も年金額に反映すべきだということでこのような離婚時年金分割という制度ができたのでしょう。
この制度は請求しないと利用できません。
是非知っておいてください。
この記事の著者
金子賢司(かねこけんじ)CFP資格所有者
これまでに1000件以上の家計の相談や住宅ローン、生命保険の相談に携わる。UHBなどテレビのコメンテーターや確定拠出年金、イデコのセミナー等年間50回程度のセミナーを行っています。 LINE@dli3529l Twitter @NICE4611 金子賢司 公式HP
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