リスクマネジメントの手法とリスクコントロール

リスクマネジメントの手法とリスクコントロール

リスクマネジメントとは

リスクマネジメントという言葉をあえて定義するなら、個人や企業が好ましくない不確実性を管理し、経済的かつ合理的な手段で回避、低減するための管理手法ということになります。

個人や企業が生活や事業活動をするうえで、どんな思いがけない危険があるか?(不確実性)を洗い出し、保険で備えるのか?またはそもそも原因となる行動をやめるか?それ以外の選択肢(経済的、かつ合理的な手段で回避、低減)か?どんな方法でその不確実性をクリアするかをあらかじめ考え、いざその時になったら誰が、どのように実行するかを考えることがリスクマネジメントということになります。

リスクマネジメントは事故が発生する前に行っておくべき対策と、事故が発生した後のために備えておくべきことの2つに分けられます。

リスクマネジメントの手順

riskmanagement-flow

まず、どのようなリスクが企業活動や個人の生活の中で考えられるかを洗い出します(リスクの確認)。そして、リスクの評価をし、どのリスクを優先的に解決するかの優先順位をつけます。さまざまな考えられるリスクも全て解決するためには時間もお金もかかるので、対応しきれないことがあるので、優先順位をつける必要があるのです。

リスクコントロールとリスクファイナンシング

リスクコントロールについて

リスクコントロールは以下の6つがあります

①リスクの回避

リスクを最初から生じさせないこと、あらかじめそのリスクが考えられる行動をしない。という選択肢です。リスクの高い新規事業は行わない。

海外旅行に行く時は飛行機は使わない。という選択肢を選ぶこと。

②リスクの予防

リスクを発生させないように対策を立てておくことです。火事が起こらないように、建物を耐火構造にしておくこと等です。

③リスクの低減

実際に事故が起こったときでも、被害を最小限にするために設備を整えておくこと。

火事が起きた時のためにスプリンクラーを付けておく、事故が起きた時のための従業員のマニュアル整備、対応方法の日ごろの訓練を行っておく等。

④リスクの結合

リスクの起こりうる事業などを一か所に集中することで、管理がしやすい(予見がしやすい)、または損害額の予測がしやすい等。

⑤リスクの分離

1つの製品をたくさんの工場で製造できるようにしておくこと。1つの工場で事故が発生しても、もうひとつの工場があれば完全に商品供給がストップするというリスクがなくなります。

⑥リスクの移転(リスクコントロールの場合(非財務的移転))

リスクが発生したときの責任の所在を他人に移転させておくこと。自分の建物が損害を受けた時は自社は責任を負わないといった免責事項を契約内容に盛り込んでおくこと

 

リスクファイナンシングについて

リスクファイナンシングについては以下の2つです

①リスクの保有

個人の場合は事故が起きた時に備えて貯蓄しておくこと、企業では引当金などでリスクに備えてお金を準備しておくことをいいます。

あまり聞きなれませんが、キャプティブという方法も移転の方法としては有効とされています。

キャプティブとは企業グループの中に保険子会社を設立。その企業グループの保険契約を一手に引き受ける保険会社のことをいいます。

キャプティブの詳しい説明はあまり世の中で使うことはありませんが、以下説明です。興味のない人は飛ばして結構です。

参考:キャプティブは何のためにある?

A社という極めて大きい自動車メーカーがあったとします。例えば自動車事故が起こりその責任がA社の設計ミスであることが発覚し、そんな車のってられるか!!と

たくさんの人から賠償金を求められたとします。それが、保険で全部払われるかどうかはケースバイケースではありますが、そのような時にお金が保険会社から出るように

A社は危険の備えとして保険に加入します。

しかし大企業が加入する保険というのは、一度事故が発生する莫大な金額になることも大きいので、大きな補償を用意しておかなければなりません。

大企業が備えておかなければいけない保険料というのは、個人のように毎月1万や2万では済まないのです。毎月数百万、数千万の保険料を払うことにもなりかねません。

A社としてはたしかに何かが起こると怖いですが、基本なかなかそのような大規模な事故は内容に日ごろ努力しますし発生するかどうかもわからないそのようなリスクに毎月数百万、数千万保険会社に払うのはバカバカしいと思うのも当然です。

また保険会社はいろんな企業や個人のリスクを全て総合的にみて保険料率を決めています。

世の中でA社以外にB社、C社という自動車メーカーがあったとして、このB社、C社が製造した商品に欠陥ばかりで保険金をバンバン受取っていたとすると、保険会社も自動車業界の保険料はちょっと保険料率を高くしないと採算合わないな・・ということで自動車業界の保険料を値上げをすることが考えられます。

A社がどんなに経費を使って頑張ってリスクを抑えて事故を起こさないと努力をしても、B社、C社を含めて自動車業界がものすごい勢いで保険事故を起こしているとA社もその高い保険料率が適用されてしまうのです。

これはA社にとっては非常にバカバカしい話です。なんでB社、C社と同じ保険料なんだ!!こんなにわが社(A社)は事故が少ないのに!!

となるのは当然です。

じゃあ保険なんて払わずに自分で用意しておくよ!ということで万が一のために現金を内部留保という形で持っていると、この金額には資産ということで税金がかかってしまいます。

そこでA社は自分で保険会社を設立します。

A社はここに保険料を納めることになります。リスクの小さいA社単独のリスクなので、比較的保険料は低く抑えられます。

保険会社はたくさんの人から保険料という形で預かったお金を運用して収益を上げるので、このA社のキャプティブも多少なり運用をすることでその運用益も享受することができます。

その他、再保険によるリスクの再転嫁ということでリスクを分散できるというメリットもあります。

②リスクの移転(リスクファイナンシングの場合(財務的移転))

リスクファイナンシングの場合のリスクの移転とは単純にリスクを生命保険や損害保険会社に移転をすることになります。

リスクを管理する方法として以下のような表が使われます。

riskmap

 

 

このようなマトリクスを造り分類をしてみます。

損害の規模大、頻度が多いリスク

は回避(その事業はやらない)または頻度を抑える努力をする(低減)に努めるようにします。

損害の規模大、頻度が少ない

火事や地震がこちらになります。このゾーンは保険でカバーすることが的しています。しかし保険だけではなく、低減する努力もあわせて行います。

損害の規模が小さい、頻度が多い時

自社の自動車事故が頻繁に発生するようなケースです。一般的には頻度を少なくすることが最優先で、安全運転講習や運転適性チェック等で低減をしながらも、保険でカバーするという方法を取られます。

損害の規模が小さく、頻度が少ない時

保険で備えておくという方法もありますが、頻度が少なく、そもそも金額も少ないのであれば低減(発生しない方法を検討する)に努める方法を取ります。