先進医療特約は必要か?白内障の給付事例

先進医療特約は必要か?白内障の給付事例

先進医療特約は必要か?白内障の給付事例

medical

民間の医療保険のお話をされて、先進医療という最新の医療技術を受けられますよ。

先進医療特約が付いていないのでつけておきますね。

特約保険料は月に100円そこそこですから、ジュース1本ガマンすればいいんです!!

こんな安易なセールストークをする保険の営業がいます。

ジュースを毎月1本我慢して先進医療特約をつけたとします。

しかしいざ先進医療を受けたいと思っても、使い方を知っている保険の営業はほとんどいません。

まずあなたががん宣告をされたとして、どうしても助かりたい!

長生きしたいとおもったとします。

あ!あの営業の人、たしかがんの最新の治療、先進医療の治療費をまかなえる特約がついているといっていたわ!

ということで先進医療特約の出番です。少し以下詳しく見ていきます。

先進医療特約とは?

medical

先進医療とは

厚生労働大臣が定める高度な医療技術を用いた療養。保険給付の対象とすべきかどうかを評価する、評価療養の一部。保険診療との併用が認められている(コトバンクより)

通常の健康保険が適用となる治療(保険診療といいます)を受けた場合、年齢にもよりますが一般的には3割が自己負担です。10万円の治療費がかかったとしたら30000円を自己負担すればいいということになります。

ところが、手術などの診療行為に保険適用外の診療が含まれていると診療行為全体が自由診療となり全額自己負担になってしまいます。

【前提条件】

「保険適用となるAという手術」でかかった費用5万と「保険適用とならない保険適用外の手術B」でかかった費用10万

合計15万円かかったとします。

普通に考えれば保険適用Aは3割負担だから15000円+保険適用外の手術Bの10万で

11.5万円の負担と思いたいところです。

一部でも保険適用外の手術が含まれるとAも全額自己負担になってしまうのです

したがって

15万円全額自己負担になります。

しかし例外があります。

保険外併用療養費

という制度です。

仮に保険適用外の手術Bが保険外併用療養費が認められる診療であれば

保険適用Aという手術は3割負担なので5万×3=15000+保険適用外手術Bの費用10万円=11.5万円

という式が成立するのです。

保険外併用療養費が認められる具体的な項目の中には

①評価療養と選定療養

②患者申出制度

があり、①の「評価療養」の中に先進医療が含まれているのです。

先進医療を定義する方法として、最先端の医療技術という説明は正確ではありませんがあながち間違いでもありません。

すごくざっくりいえばそういうことだと思ってください。

この先進医療の部分は要するに3割負担ではなく、全額自己負担になってしまいます。

民間の医療保険は健康保険の対象にならない(3割負担にならないで全額自己負担になるもの)手術は支払の対象になりません。

そこでこの先進医療でかかった費用を保険でまかないますよ。

というのが民間の保険会社についている医療保険の先進医療特約です。

先進医療の主な種類と費用

全ての先進医療を知りたい方は厚生労働省のホームページをご覧ください。

技術名どんな病気で使用されるか主な事例料金(平均)(全額自己負担)
陽子線治療肺がん、刊がん、前立腺がんなど約268万
重粒子線治療肺がん、膵臓がん、子宮がん約308万
歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法歯槽膿漏、歯周病など約6万
前眼部三次元画像診断緑内障、角膜ジストロフィー約4千円

安いものもありますが、やはりがん治療で有名な陽子線治療や重粒子線治療は高いです。この金額が全額自己負担ではたまったもんじゃありません。

そして民間の医療保険も健康保険の適用にならない手術は保険の対象にはなりません。

先進医療の手術代は先進医療特約がないと全く受け取れません。

じゃあ、先進医療特約はもちろんつけておかなきゃとなりますが・・

ところがこの先進医療はあまり使われることがありません。なぜなんでしょうか?

そもそもそんなに沢山利用される医療なら、すでに通常の健康保険に認定されているとおもうので、件数が少ないのは当たり前なのですがそれでも少ないのは理由があります。

先進医療特約は簡単には使えない、2つのハードル

PublicDomainPictures / Pixabay

インターネット検索で先進医療での治療方法をみつけて、先生、調べてみたんです!

あの先進医療を受けさせてください!と言ったとします。

ハードル1・・厚生労働省の認定機関であることが必要

医療機関は厚生労働省から先進医療の認定を受けていなかったら、そこでは先進医療として手術を施してはくれません。

A医療機関ではとある手術が厚生労働省に、先進医療と認定されていません。

ところがBという病院が、とある手術をするにあたって先進医療の認定を受けていたら。

病院では同じ手術でもB病院で受けた手術だけが先進医療という扱いになります。

その医療施設が先進医療の認定を受けているかどうかが重要です。

ハードル2・・医者が紹介してくれない

しかし、仮にその希望している手術が厚生労働省の認定があり、先進医療として扱ってくれることになったとします。

先進医療の重粒子線治療受けたいです!

とお医者さんにつたえて、快くわかりました。

そうですね!

先進医療の手術でなんとか完治するとよいですね!

一緒に頑張りましょう!というお医者さんはかなりレアです。

これが2つめのハードルです。

先進医療は普通の医師は応援してくれないんです

なぜなら、先進医療は簡単にいえばお医者さんにとっては、得体の知れない技術という扱いです。

通常の健康保険の適用にならない手術をお勧めして、仮に患者に何かあったら。。

そのお医者さん本人の・・ひいては病院の信用問題になってしまいます。

決してこれはお医者さんの悪口、ではなく自分がその立場だったらどうでしょう。

仮に自分の友達ががんになって、そうだ○○っていう「臨床結果はまだ少ないけど」すごい技術の医療があるらしいよ!

やってみたら!

なんて簡単には言えませんよね。

最期は本人に判断をゆだねませんか?

先進医療に該当する治療を受けるためには、あなたが先進医療をどうしても選択したい。という宣言というか意思をお医者さんに伝えなければなりません。

 

先進医療を受けたいと言ったら医師に見切りをつけられる・・

Bessi / Pixabay

どんな手術をうけようと患者の勝手でしょ。

その通りですが、

あなたが、私は先進医療をどうしてもうけたいです!

と伝えたら、

お医者さんはわかりました。

ではうちの病院では今後一切あなたの治療や診断はおこないません。

いいですか?

というでしょう。

先進医療を選択したのはあなたで、その後一切なにがあってもうちの病院の責任ではありません。

と責任の所在を明確にしないといけないのです。

なぜこんなことをいうのか、お医者さんの言い分はこうです

先進医療を受けて、仮にその後、かつて先進医療を受ける前に受診にしていた病院に戻ってきて悪化したとします。

先進医療という臨床結果が少ない手術を受けたのは、あなたの判断で、お医者さんからしたらだから言わんこっちゃない!

というのが本心です。

しかし悪化したという事実がある以上病院は責任を追及されかねません。

先進医療を受けた先の病医で受けた治療で悪化したのか、自分の病院で悪化したのかの判断がつけられなくなり、

お医者さんは勧めなかった得体の知れない手術で病院の責任を追及されたらたまったもんじゃない!

というわけです。

人の命を預かる医者です。

そして人命にかかわる責任は重いのです。

お医者さんの言い分もわからなくはありませんよね。

「当病院のせいではありません」ということはハッキリしておきたいので、もう先進医療を選択したら後戻りはできません。

先進医療はなかなか受けることが難しいことのもう一つ。

その原因のひとつにDPC制度の導入ということが挙げられます。

DPC制度とは(でぃーぴーしーせいど)

Myriams-Fotos / Pixabay

D=Diagnosis(診断)

P=Procedure(手順)

C=Conbination(組み合わせ)

の頭文字をとったもので、別名正式名称は「診療群分類包括払制度」といわれます。

これまでは患者に対して治療をした分報酬をもらえていました。

出来高払いだったのです。

しかしそうなると患者にできるだけ長くいてもらったり、必要以上の投薬や検査が行われ、その分報酬がもらえるという仕組みになっていたのです。

この分も当然一般的にかかった医療費は3割負担で残り7割は国の負担になります。

国の医療費の財政が厳しくなっている現在、この仕組みを見直す必要が出てきたのです。

医療費削減のために作られた制度がDPC制度です。

このDPC制度は、厚生労働省が2003年に導入を開始して、急性期病院ではこのDPC制度の導入が推奨されています。

その後も導入が推進され2014年現在では全国にある一般病床約90万床のうち約49万床がDPC制度を導入しています。

DPC制度のポイント

geralt / Pixabay

入院基本料+検査+画像+投薬+注射+10000円(診療報酬1000点未満の報酬は1日当たりの診療報酬点数に含まれます。

この部分を包括部分といい、そのほかの手術+麻酔+放射線などは出来高払いのままという組み合わせで総医療費は決まります。

  1. 入院基本料、検査、画像、投薬、注射等10000円(診療報酬1000円)未満の報酬は1日当たりの診療報酬点数に含まれる。(例外あり)
  2. 1入院につき請求できる診療報酬は1疾病分のみ
  3. 入院日数が長引くと診療報酬点数が下がる

したがって、とある病気で入院している患者にいくら投薬や注射等の包括部分に該当する処置をしても、病院に支払われる金額は決まっているので無駄と思われる包括部分の処置は行わなくなってきました。

包括部分の処置を繰り返しても、手間がかかるだけで病院はお金にならないということです。

逆にいまだに出来高部分に該当する部分はいまだにやればやるほど病院はもうかるという仕組みです。

したがって、患者さんを効率よく最短で回復させれば、病院の利益は最大になります。

一定期間入院をすると、1日当たりの入院にかかる病院の診療報酬は下がっていく仕組みになっています。

そう考えると病院の平均入院日数が短くなっているのは医療が進歩しただけではないということもおおよそ推測できると思います。

するとこうなります。

手術を中心とした、短期で退院できる治療計画

他の病院へ紹介した時の紹介の診療報酬は2500円。

がんが見つかって手術をした時の診療報酬は数百万になることもあります。

あなたがお医者さんなら、どう判断しますか?

さらに手術や麻酔、放射線はいまだ出来高払いです。

みすみすドル箱の患者を他の病院に紹介しますか?

当然、そうする人もいるでしょう。

しかし、そうはなっていないのが実態です。

当然そうなると得体の知れない先進医療より標準医療の手術という固定観念が医師に生まれてしまいます。

重粒子線で、、陽子線治療で・・といってもそのような固定観念をもった医者から一番いいのは手術(標準治療)ですよ!

先進医療なんてわけわかんない手術はやめなさい。

大病を宣告されて真っ白な状態でこのような医師のアドバイスに逆らえますか?

親身になってくれる人が大半ですが、やはりセカンドオピニオンという選択肢は必ずどんな頭が真っ白な状態でも持っておく必要があります。

これを常に念頭に置いておけば、いざというときにがんとの闘病でも先進医療特約は生きてきます。

先進医療特約給付件数ナンバーワンは白内障

保険の営業ではもはや常識ですが、先進医療特約めったに使いません。

しかし、先進医療給付件数でダントツナンバー1は重粒子線、陽子線などのがんの治療ではありません。

白内障の多焦点眼内レンズ挿入術。なのです。

あくまでも「件数」という観点で、金額ではありません。

最先端のがん治療という誤解

先進医療をお勧めする営業トークとして、重粒子線治療や陽子線治療で300万位かかるんですよーという話があります。

実際保険会社のパンフレットでもいまだに先進医療の給付事例として上記の術式を挙げている会社が多いのも事実です。

前述しましたが、がんの治療以外にもたくさん種類があります。

白内障治療の多焦点眼内レンズ挿入術について

白内障は目の水晶体という部分が加齢とともに濁って視力が低下する状態をいいます。

この水晶体を超音波で砕いて取り出して、人工のレンズを入れる方法が代表的な治療法あります。

標準的な手術に単焦点眼内レンズを挿入する方法と多焦点眼内レンズを挿入する方法があります。

その詳細については専門家ではないので、わかりやすく比較している眼科のサイトがあったので参考にしてください。

横浜市中区の稲村眼科クリニックさまのHP

 

先進医療の中でも、頻度が高いので白内障を除外とする動きが一部保険会社で出てきています。

白内障手術が先進医療の給付から外れる保険会社が現れ始めました

白内障を先進医療で治療するまでのやり取りの実例

今回給付に至ったケースではお客様からの働きかけで焦点眼内レンズの手術に至りました。

加入の際に先進医療特約について、先進医療は重粒子線治療や陽子線治療だけでなく、

もっともよくつかわれているのは白内障の治療ですとお客様に伝えておいたのです。

病院から老化に伴い白内障の傾向があり、見えにくくなってますねという診断をされていました。

お客様が白内障で先進医療があると聞いたのですが?と自ら先進医療を病院に提案したケースです。

その医療機関が多焦点眼内レンズ手術を先進医療として取り扱える医療機関であったため、先進医療特約を使うことになりました。

その手術代は両目で約70万円。

先進医療なので健康保険は使えません。

医療保険の先進医療特約がなければ全額自己負担になるところでした。

最近の白内障の多焦点眼内レンズの手術は両目で150万~200万近くかかるみたいですね。

Alexas_Fotos / Pixabay

あくまでも結果オーライです。

どこまで自分自身にリスクが今はない状態で、自分に起こりうるリスクを想定して必要と思われる保険に加入をするかが選択のポイントです。

使わないのが一番なのですが、使ったとしてもやっぱり入っていてよかったといってもらうのが一番の保険を取り扱う人の一番うれしい瞬間です。

高齢者はやはり備えておきたい

ある程度の年齢になれば白内障は起こる可能性は高くなってきます。

ご自身で多焦点眼内レンズの手術も賄えるお金があればいいですが、やはり医療保険は高齢になっても辞めずに最低限残しておけば先進医療特約は使えます。

いろんな選択肢はありますので、この白内障の多焦点眼内レンズ挿入術が医療保険の先進医療の対象になるということを知った上で、みなさんの保険担当者やお医者さんと相談してみてはいかがでしょうか?

全ての医療機関で先進医療となるわけではない

ここからは注意点です。

たとえ多焦点眼内レンズ再建術ができる医療機関であったとしても、先進医療として取り扱えない医療機関もありますので注意が必要です。

この病院は先進医療になりますか?という確認が必要です。

また、先進医療に認定される手術は入れ替わることがあります。

ある時期は先進医療だったのに1年後、先進医療でなくなっているケースがあります。

あくまでも今回の事例は2017年5月時点でのお話です。

やはり先進医療として手術を受けるのは直前で医療機関、保険会社への確認が必要です。

最後にもう一度確認!患者さま自身の明確な同意が重要です

先進医療は患者さまからの働きかけで受けることができます。

先進医療を受ける時は同意書などを医療機関から求められます。

なんとなく先進医療というと最新の手術で、必ず先進医療の方が治療方法としては優秀なわけではありません。

今回の白内障の手術にしても、単焦点がいいのか、多焦点レンズ手術がいいのか医療機関も説明はしてくれますがメリットデメリットがあり、選択は自己責任になることに注意が必要です。

先進医療はまだ臨床結果が少なく、最新の治療ではありますがあくまでも実験段階の治療である。

ということをくれぐれも注意してください。

金子賢司

この記事を書いた人

ファイナンシャルプランナー金子 賢司

これまで1000件以上の家計、住宅ローン、生命保険、損害保険、資産運用の相談に携わる。UHBなどのテレビのコメンテーターや確定拠出年金等のセミナーを毎年約50回実施。CFP資格保有者。TLC(生命保険協会認定FP(TLC資格とは))、損害保険トータルプランナー公式HP