高齢者や外国人の採用で高まる労災リスク

高齢者や外国人の採用で高まる労災リスク

高齢者や外国人の採用で高まる労災リスク

働き方改革と全体的な人手不足の影響により、一億総活躍社会と政府がスローガンに掲げていることもあり、今までには考えられなかった労働者が労働市場に参入しています。

ドンキホーテのレジは外国人だらけ、マクドナルドも一見日本人かと思って何となくカタコトの言葉でよく名札をみたら、外国人だった。。厨房をみると、ちょっと腰曲がりめのおじいさんがハンバーガーにレタスをのせている。。

つい最近どころか、もうこういう光景に慣れてきたと思うくらい新しい労働者が参入しています。

人が足りないのですから、当然の流れだと思います。

しか変化が起こればやはり弊害もあるもので、新たな問題に企業は直面しています。

今回は人手不足や働き方改革に伴い発生する労災についての理解を深め、課題と解決策をお伝えしていきたいと思います。

労災とは

労災とは労働者市街補償制度の略で、業務上や通勤上に関連した労働者の病気、ケガ、障害とそれに伴う介護や万が一に対して保険給付を行う制度です。

保険者政府
適用事業労働者が一人でもいる事業は強制加入
対象者全労働者
給付事由業務上や通勤途中の病気、ケガ、障害、万が一、それにまつわる介護
窓口労働基準監督署
保険料全額事業主負担

一人でも労働者(パート、アルバイト、外国人労働者も含む)がいる事業所は強制加入となり、途中で脱退などはできない。仮に事業主がA社員の労災保険の手続きを労働基準監督署に届け忘れていていても、A氏が業務中にケガをした場合はA氏は労災保険の給付を受けることができます。

ちなみに公務員は労災保険は適用されません

労災には業務上の事故に対して補償する業務上災害と通勤途中でのケガや病気で支払う通勤災害の2通りあります。

業務上災害について

まず業務上災害としての労災が適用となるためには

業務遂行性と業務起因性の両方が必要要件になります。

業務遂行性

労働者が労働契約に基づき、事業主の支配下にあること。

業務起因性

労働者が従事している業務やそれに関連する業務が原因で事故が発生していること。この原因がなかった仕事でケガをすることはなかったというような具合です、

通勤災害について

通勤災害とは通勤中にケガ、病気になったときに給付が受けられるものですが通勤とはどこまで指すのかが議論になります。気分転換に通勤時間には間に合うので、遠回りして会社に行った。親が介護で親の家に寄って、定期的に世話をしてから会社に出勤しているなど。

問題になるのは、出勤前に自宅から親の家に行く間にケガをしたときは通勤中の災害とみなして労災の給付が受けられるのか?それは自分の都合だから、単なる寄り道で会社は関係ないから治療費は自己負担でお願いします。となってしまうのか?というところです。

結論としてはこのケースは通勤とみなされ、治療費は労災から給付されます。

様々なケースが論点になりますが、今回はそこは省きます、

労働者がケガや病気で入院し、治療や手術を受けた場合は業務上災害の業務遂行性と業務起因性が認められた場合や通勤災害と認められた場合には以下のような給付が受けられます。

労災2

労災の給付内容

現物給付

病気やけがをしたときに労災病院や労災指定病院で治療を無料で受けられます。

現金給付

まず労災病院や労災指定病院で治療を受けて、まず自己負担をしたような場合は後でその費用が支払われます。

休業給付

療養により、4日以上会社を休み、給料が支給されない時は休業の4日目から1日あたり、給付基礎日額の60%が支払われる。休業給付が支給されない3日間は事業主による休業補償があります。

その他傷病が1年6カ月以上を超えてもまだ治らずに一定の要件に該当すれば、受け取れる傷病給付、障害状態になったときに年金形式や一時金で給付する障害給付、労働者が亡くなった時に遺族に年金形式や一時金が支払われる遺族給付、葬祭料、介護給付などがあります。

労災はできれば使いたくない・・

従業員が業務上や通勤途中でケガをしてしまった・・事業主は労災を使うことを嫌がります。

労災をなぜ使いたくないのか?

労災は業種によって保険料が異なります。危険の大きい職業(建設業など)は保険料が高いです。労災が起こる可能性が高いからです。

しかし、その事業所で何度も労災が発生すると危険な仕事だからしょうがないよね。。と労働基準監督署が許してくれるわけではありません。

労災を使うと業務に支障をきたす

労災が起こらない対策をきちんと施していれば別ですが、万が一その事業所がブラック企業で過酷な労働条件で働いていたり、適切な管理がなされていないことが明るみになってしまった場合は指導や処分により建設業などでは仕事をもらえなくなってしまったりなど様々な不利益を事業所は被ります。

メリット制を採用している

また企業の人数によってはメリット制といって、労災事故がない事業所の保険料を安く、事故が多い事業所の保険料を高くする制度を採用している会社もあります。

そうなると当然労災は使いたくないのが事業主の心情というところでしょう。

労災3

高齢者と外国人労働者の労災適用の増加

外国人労働者について

2019年4月から始まった出入国管理法改正に伴い、外国人労働者の流入が増えている。建設業といった危険な業種ではなく、職場の安全対策が万全でない業種(小売りや社会福祉施設など)での災害が最多となっている。

あまり危険な動作が業種的に無いため、マニュアルなどが徹底されておらずに事故が発生していると推測されます。各事業主は外国人労働者の増加に備え、マニュアルを多言語で作るなどの安全対策の作成を迫られています。

以下の表を見てもらうと毎年労災の適用者が少しずつ増えているのがお分かりいただける。そしてもう一つ注目なのが技能実習生も増え続けていることである。低賃金や安全対策のできていない、劣悪な労働環境で働いているということが推測される。

外国人労災
出典:厚生労働省HP

下半身の損害により介護状態になってしまった場合、とんでもないリスクを負わされる可能性もあることを念頭においておくひつようがあります。

高齢者について

以下の表を見てもらうと平成27年に60歳以降の労働災害者の人数が一番多くなっていることがわかる。

高齢者1

ケガ別にみていくと転倒、墜落、転落の比率が圧倒的に高い。視力や握力、バランス保持能力といった身体機能の低下が要因と考えられる。

 

高齢者2

労災の保険でしっかり備えておきたい

高齢者や外国人労働者の採用が増えれば、労働災害リスクも増える傾向にあることがすこしずつ明らかになってきています。

思わぬ出費にならぬよう、労災だけでなく損害保険で対応したいところです。

民間の労災保険には比較的安い保険料の労災上乗せするものと、労災の認定を待たずに保険の給付を受けられるが少し高いパターンの2通りがあります。

よく商工会や某外資系で紹介される労災保険は前者の方です。前者は労災と認定されることが給付の要件になります。労災だけでは足りない・・と思うときにこちらの保険を採用します。

しかし前述しましたが、労災をできれば使いたくないという人もいます。労災を使わずに手術代や入院、通院、見舞金などをカバーしたいときは労災認定の不要なパターンの民間の労災保険を選択するとよいでしょう。

使用者賠償責任保険を知っておきましょう

しかし事業主の中には社員のケガや手術代くらいのために保険には入らないし、労災も使わずにポケットマネーで済ませてしまうケースもあるでしょう。

本当に怖いのは、遺族から訴えられた場合などです。

過労などで亡くなってしまい、遺族から慰謝料を請求されたときなどは想像以上の金額を請求される可能性があります。相手が弁護士などを立ててくると、さらに請求額は高額になる傾向があります。

高齢者の場合に気になったのが、転倒による労災事故が多いという点です。

高齢者は下半身の骨が折れることで、寝たきり→要介護につながるケースが多いです。

高齢者を採用して、転倒された挙句に長期間の介護状態になってしまえば当然、業務との因果関係がありますので介護についても賠償責任を親族から問われることになるでしょう。

言い方は厳しいかもしれませんが、高齢者や外国人は今のところ労災リスクが高いといえます。貴重な戦力ですので、しっかり労災の保険でカバーしていく必要があります。