保険業法
- 2018.10.27
- リスクと保険
保険業という業種は、商品・経理が複雑で公共性が極めて高い業種です。
保険屋さんはもうけている・・そんなイメージがある方もいるのですが、実は皆さんの保険料は膨大な年代別の亡くなる率や事故発生率などをもとに妥当な保険料を計算して、提供されています。
また、皆さんが保険料を毎月収めているのにその保険会社が破綻したら皆さんのお金はどうなってしまうのでしょうか?破綻してしまい、そんな最中にもしあなたの保険が使い物にならず、亡くなった時の保険金1000万など高額なお金が受け取れなかったらどうでしょうか?
このように保険会社の業務というのは極めて公共性が高い仕事だということがお分かりいただけたと思います。
保険業法
そこで保険業法は保険契約者保護、事業の健全性維持のために、営利を目的とした商行為の自由に制限を設けています。
似て非なるものに保険法というものがあります。
保険業法は商行為を律する法律、保険法は保険契約を律する法律です。
保険業の定義
①人の生存に関して一定額の保険金を支払うことを約束して保険料を収受する保険(要するに生命保険)
②一定の偶然の事故によって生ずることのある損害を填補(てんぽ)することを約束して保険料を収受する保険(要するに損害保険)
③そのほかの保険(第三分野の保険)
以下の業種には保険業法ではない特別の規定があるため、保険業法に基づく規制の対象外です
・共済・・JA、全労済、都道府県民共済、COOP共済
・公的制度としての共済・・・国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私立学校教職員共済
・船主相互保険組合法によるもの・・船主相互保険
かんぽ生命も、従来は保険業法の適用はありませんでしたが、現在は郵政民営化にともない保険業法が適用されています。
保険業法300条
保険募集に関する規制として、もっとも重要なのが保険業法300条です。
この条文では保険契約の締結や募集について以下のような禁止事項を設けています。
保険募集人、保険仲立人、その役員、使用人はこれを遵守しなければなりません。
①虚偽の事実を告げること、重要事項の不告知
保険加入をしていただきたいがために、事実とは異なる説明をしたり、お客様がこれを聞いたら契約してくれないだろうなぁと思い、お客様にとって不利益となる重要なことを話さなかった。
②告知義務違反を勧める行為
生命保険に加入するためには現在の健康状態を確認する必要があります。この告知義務を逸脱する行為を進めること。
③正確な告知をすることを妨げる行為、または不利な告知を告げないことを進める行為
②の告知義務違反をこちらから提言することももちろんダメです。
④不当な乗り換え募集
顧客に不利な情報を告げずに保険の乗り換えさせる行為(のりかえとは他の保険会社の商品に変更すること)
は禁止です。
他社の保険会社から自分に切り替えてほしいばかりに、お客様に不利になる情報を伝えなかった。
⑤特別利益の提供
保険に加入してくれたら、毎月10%割引します等。保険はきわめて公共性の高い仕事であるため、値引き販売などは一切できません。保険料などで割引はできないので、金銭や物品を渡したりする行為が原則禁止です。
⑥誤解を生じさせる比較、表示
④と同様ですが、自社の保険に加入してほしいばかりに、お客様に誤認をさせるような他社比較や他社比較でなくても、他社よりも優れているような情報提供をすること。
⑦断定的な判断を告げること、表示すること
・・不確定なのに、分配金や剰余金が必ず支払われますと告げたり、誤解を招くような文書を提供すること
⑧他社の誹謗中傷
あの会社は保険金を出さないという噂をよく聞きますよ。
あの会社はつぶれそうなど他社の誹謗中傷は×です。
⑨他社の信用、支払い能力の不当表示
⑧と同様です。
⑩圧力募集
もと大学の先輩、もと上司、またはお世話になっているなどの上下関係や取引関係を利用した募集は禁止です。
保険業法第300条罰則
保険業法を遵守しない場合は以下のように罰則が設けられています。
上記①~③の行為を行った場合は刑事罰の対象になります。
1年以下の懲役または100万円以下の罰金またはその両方。さらに募集人登録抹消、業務停止、業務改善命令などの行政処分の対象となります。
④~⑩は刑事罰の対象にはなりませんが、行政処分の対象になります。
保険業法改正(平成28年5月~)
保険業を取り巻く環境を鑑み、保険業法の一部が改正されました。
保険業法を取り巻く環境変化とは、来店型の保険ショップなどでたくさんの保険会社の商品を取り扱う店舗が増え、募集人の意志や、保険会社との関連性だけで特定の保険会社に偏った提案をお客様に提案をすることがないようにしなければならないという気運が高まっていたのです。
保険募集のルールの策定
【意向把握義務】
①意向把握義務
お客様のニーズをきちんと把握すること
②意向把握した内容の具体化
①で把握したニーズを具体的な商品に落とし込んで提案
③①と②の確認をお客様に確認する
最終的に当初の意向と、最終的な提案があっているかを確認する
【情報提供義務】
保険金の支払い条件、お支払いできない場合や保険期間、保険金額、その他顧客の参照となる情報を提供する
【比較推奨義務】
複数保険会社を取り扱う場合は、
①取り扱い保険会社を明示する
②なぜこの保険会社の、この商品を紹介するのかの理由を明示する
この2点を行う必要があります。
保険募集人に対する規制の整備
複数の保険会社を取り扱う企業が増え、保険募集人の業務や特性、規模に応じては保険会社が募集人の管理をすることが難しくなってきました。そこで、乗り合い代理店に対して、業務や特性、規模に応じて体制整備を義務付けました。
体制整備や保険募集人の監督責任が保険会社→代理店に移行したということです。
規模が大きい特定保険募集人
所属する保険会社が15社以上、または所属保険会社が2社以上かつ事業年度中の手数料・報酬の合計額が10憶以上の大規模代理店の場合、保険契約にかかる帳簿書類を保険契約者ごと、保険会社ごとに帳簿書類に記載して5年間保管する必要があります。
また、事業報告書を事業年度末の翌日から3か月以内に管轄の財務局長などに提出しなければなりません。
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