賃貸の火災保険は何でもかんでも出るわけではない
- 2019.10.30
- 火災保険
賃貸の火災保険は何でもかんでも出るわけではない
トイレの給排水の弁に損傷があり、水があふれたのですが・・火災保険で払ってもらえませんか?
下の階の部屋の天井もシミができてしまって、大家さんにも弁償しないといけないんです。
今回はこのケース、「入居者の」加入する賃貸用の火災保険では支払いの対象にはなりませんでした。
ちゃんと火災保険に加入していたのになぜ・・?
今回の事故の論点は以下の通りです。
- トイレは家財か建物か
- 入居者に責任はあるか?
それぞれのケースについて見ていきましょう。
トイレは家財か建物か?
建物に器具などで接続されていて、簡単に動かせないものは建物とみなされます。
もしトイレが今回家財とみなされていたら支払の対象になったのですが、トイレは固定されているので家財とはなりません。
賃貸向けの火災保険は家財にしか保険をかけず、賃貸物件の入居者は建物の火災保険には加入しないのが通常です。
したがってトイレが破損しても「入居者の」火災保険では支払ってもらえないのです。
では入居の時は建物の火災保険に加入をすればいいのね。。という話になりますが、賃貸物件については建物は入居者の持ち物ではありませんよね。
建物にはきちんと持ち主(大家)が火災保険をかけなければいけません。
今回のケースは「入居者の」火災保険ではなく、「持ち主」が加入している火災保険で修理をする必要があります。
ただし、持ち主の火災保険でも、水漏れ事故も補償対象に含まれていなければ支払われません。
入居者に責任はあるか?
論点の2つ目は入居者に責任はあるか?
ということです。
入居者の火災保険には、部屋に損害を与えた時の保険に通常は加入をしています。
これを借家人賠償責任保険特約といいます。しゃっかにんばいしょうせきにんほけんと読み、私たちは「しゃっかばい」と呼んだりします。
読み方や呼び方はさておき、借家人賠償責任保険特約とは何でしょうか?
自分の今住んでいる部屋は賃貸なので、借りているものです。部屋に損害を与えた場合は、大家さんに弁償をするという扱いになります。
これが借家人賠償責任特約です。
ところがこの保険の盲点なのですが、入居者に何かの落ち度がないといけないのです。
今回のケースはどうでしょうか?
トイレの排水弁は入居者からは目で確認をすることができません。破損させようにもさせることが難しいところにあるものです。
要するにうっかり入居者が壊したわけではないので、今回の水漏れは
「誰にも責任がない」のです。
ということで、入居者の借家人賠償責任保険特約でもお支払いできないのです。
賃貸の入居者が加入する火災保険は比較的様々な災害トラブルに関してお支払いするのですが、今回のような微妙なケースがあるので注意が必要です。
しかし、今回のケースは入居者に落ち度はないので火災保険が給付にならないのですが、下の階の人にも大家さんにも弁償もする必要はありません。
火災保険に加入していれば、賃貸のすべてのトラブルに火災保険が使えることではないというニッチな事例を紹介させていただきました。
この記事を書いた人
ファイナンシャルプランナー金子 賢司
これまで1000件以上の家計、住宅ローン、生命保険、損害保険、資産運用の相談に携わる。UHBなどのテレビのコメンテーターや確定拠出年金等のセミナーを毎年約50回実施。CFP資格保有者。TLC(生命保険協会認定FP(TLC資格とは))、損害保険トータルプランナー、公式HP
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