年収850万円超が増税となる仕組みをFPが解説

年収850万円超が増税となる仕組みをFPが解説

年収850万円超が増税となる仕組みをFPが解説

ツイッターでちょっとした話題になっていましたので取り上げてみました。年収850万円超のサラリーマンが増税になるという話。

これについてなぜ、増税になるのかという仕組みも含めて解説していきたいと思います。

年収850万超が増税になるのはいつから??

2020年1月1日以降の所得税に適用となります。

実は・・もうすぐでした(^_^;)

ただよく聞いてみると、給与所得控除がなんだかんだ・・とよくわからない。

給与所得と日本の所得税の仕組みがわからないと実はこの増税の意味は理解できません。

日本の所得税の仕組み

まずは日本の所得税の仕組みについて見ていきましょう。

所得税を計算するときには厳密には年収ではなくて、「課税所得金額」をもとに計算します。

年収と所得の違いを詳しく知りたい人は以下のブログを参考にしてください。

所得とは?世の中で一番わかりやすい解説

例えば年収850万円の個人事業主がいたとします。

上記の事例に当てはめると・・

年収850万は695万超~900万以下に該当するから税率は23%。
850万×23%=195.5万円控除があるから
195.5万-636,000円=1,319,000円年収850万円の人の税金は1,319,000円だね。という計算は誤りです!

まず「所得」というのは、
収入(年収)-経費の事を言います。

個人事業主の人は、その年収を稼ぐために交通費をかけたり、コピーをしたり、車を購入したりと様々な経費をかけています。

850万円の年収のうちからそれらを捻出しているのですから、そこまで税金をかけられたらたまったものではありません。

年間850万円の収入のうち、例えば年間30万交通費を使っていれば820万の部分だけに税金をかけるという計算方法でいいですよ。と税務署の人は言ってくれます。

計算するまでもなく、850万円×23%よりも、820万の23%の方が税金は安くなります

これが俗にいう「経費で落とす」ということです。

控除について

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さあここでようやく控除という言葉が出てきました。

年収850万と一概にいっても、その人の境遇は様々です。

年収850万で独身なら、贅沢し放題で生活ができる・・かもしれません。

しかしもし、年収850万の人が専業主婦の配偶者と子どもが5人いたら、、そして同居の自分の親も養っている状況だったらどうですか??

いくら年収850万とは言えなかなか厳しい生活ですよね。

このように、同じ年収でも家族の人数や年齢などで同じ税金で計算をするのは不公平ですし、かわいそうです。

このように税金を納められる能力の事を担税力(たんぜいりょく)と言います。

2019年12月現在は、配偶者がいれば年収850万の人は38万円控除が認められています。

ということは850万-38万円=812万円にしていいよ。

ということです。

控除も経費と同じ位置づけだと考えてください。

配偶者以外も実は控除があります。

それが以下の扶養控除です。

↓↓

控除額は、扶養親族の年齢、同居の有無等により次の表のとおりです。難しいので、興味のある人だけ読んでください。 先ほどの年収850万の人で子ども5人、同居で自分の親も養っている場合は、年齢などに応じて、下の区分にあてはまれば、じゃんじゃん控除していいんだな。くらいに理解してもらえれば大丈夫です。

区分控除額
一般の控除対象扶養親族(※1)38万円
特定扶養親族(※2)63万円
老人扶養親族(※3)同居老親等以外48万円
老人扶養親族(※3)同居老親等(※4)58万円
国税庁HPより

※1 「控除対象扶養親族」とは、扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。

※2 特定扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人をいいます。

※3 老人扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいいます。

※4 同居老親等とは、老人扶養親族のうち、納税者又はその配偶者の直系の尊属(父母・祖父母など)で、納税者又はその配偶者と普段同居している人をいいます。

※5 同居老親等の「同居」については、病気の治療のため入院していることにより納税者等と別居している場合は、その期間が結果として1年以上といった長期にわたるような場合であっても、同居に該当するものとして取り扱って差し支えありません。ただし、老人ホーム等へ入所している場合には、その老人ホームが居所となり、同居しているとはいえません。

給与所得者控除というものがあります

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さてここからは、個人事業主ではなくて、会社から給料をもらうサラリーマンについてのお話です。

個人事業主は年収から経費等を引くことができますが、サラリーマン等は会社から給料をもらっても、経費等を引いたりはしてくれませんよね。

会社が交通費などは負担してくれるとは言え、

例えば会社に行く時に着ていくワイシャツやネクタイ。

ちょっとしたビジネス書籍なんかは会社が負担してくれることはないはずです。

サラリーマンには目に見えない経費というものがある。

でも一人一人計算しているわけにはいかないので、ざっくりとこれだけの給与の人はこれだけ控除するよ。

という給与所得控除が認められています。

給与所得控除は個人事業主のように経費というものが存在しない、サラリーマンに認められた経費の事をいいます。 その経費は給与所得控除計算表で算出します。

2019年までの給与所得控除

これまでの給与所得控除はこうなっています。

収入金額給与所得控除
180万以下収入金額×40%65万に満たない場合は65万円
180万円超~360万以下収入金額×30%+18万円
360万円超~660万以下収入金額×20%+54万円
660万円超~1000万以下収入金額×10%+120万円
1000万円超220万円

2019年の給与所得控除と2020年の給与所得控除の内容をみて何か気がついたことはありますか?

一定の給料をもらっている人は、控除額に上限があるんです!

2019年の表では1000万超の給料をもらっている人は控除額が220万以上は増えないのです。

実際に計算すればわかります。

給料での収入が1000万-220万=780万。

この780万に税金がかかるとすると、前半で使用した所得税の計算表に当てはめると、

780万×23%-636000円=1,158,000円

他に何も控除が無ければ、この人が納める税金は1,158,000円です。

では年収1500万の給与所得をもらうサラリーマンで計算してみましょう

年収1500万円でも、控除額は220万円で打ち止めです

他に何も控除が無ければ1280万円に前述の所得税の税率を当てはめます。

1280万円の税率は33%なので

1280万円×33%-1,536,000円=2,688,000円!!

所得税は2,688,000円に跳ね上がります。

細かい計算がもしわからなくても、、

サラリーマンの給料に対しての税金は、一定額を超えると控除額に上限があるため、税金額が爆上がりする仕組みになっているのです。それが2019年までは1000万円以下だったのですが、

2020年以降の給与所得控除

2020年以降はこうなります。

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下収入金額×40%-100,000円
550,000円に満たない場合には、550,000円
1,800,000円超3,600,000円以下収入金額×30%+80,000円
3,600,000円超6,600,000円以下収入金額×20%+440,000円
6,600,000円超8,500,000円以下収入金額×10%+1,100,000円
8,500,000円超※ 1,950,000円(上限)

おお!なんだか見たことがある数字が・・

いままでは1000万円を超える給料の人たちがターゲットだったのですが、850万円を超える人たちにまでターゲットを広げてきたというのが今回増税と言われている意味です。

給料が高い人は賢く生きましょう

国は年金や健康保険の財政不足から、取れるところから取ろう。

そして収入が丸裸で把握でき、税率を上げてもあまり文句をいわない年収の高いサラリーマンをターゲットにステルス増税を続けています。

これだけの給料を得ているサラリーマンは優秀な人だと思いますので、

副業や投資、資産運用などで節税をする意識をもち、

無駄に国に健康保険や税金を取られないように対策を立てましょうね。

金子賢司

この記事を書いた人

ファイナンシャルプランナー金子 賢司

これまで1000件以上の家計、住宅ローン、生命保険、損害保険、資産運用の相談に携わる。UHBなどのテレビのコメンテーターや確定拠出年金等のセミナーを毎年約50回実施。CFP資格保有者。TLC(生命保険協会認定FP(TLC資格とは))、損害保険トータルプランナー公式HP