郵政民営化の停滞に見る日本企業の縮図
- 2019.12.28
- 時事ネタ
郵政民営化の停滞に見る日本企業の縮図
かんぽ生命による不正な保険募集が多数発生しており、
局員がなぜ不正な募集に手を染めてしまうのか?ということを調べてみると、
上司からの過度な営業ノルマを課していることが発端で、さらにさかのぼれば、
この過度なノルマを課している根本は、日本郵政というグループトップの企業の経営者が作り出している体質が原因であるという指摘が出ていました。
日本郵政やら、かんぽ生命やら、ゆうちょ銀行やら・・
なんだかグループ企業が良くわからないという人もいるかも知れません。
日本郵政グループの仕組みは以下のようになっています。
日本郵便というものが大元にあり、その下に郵便局をもつ(日本郵便)、銀行機能をもつ(ゆうちょ銀行)、そして保険機能をもつ(かんぽ生命)がぶら下がっているというこのような構造になっています。
不正があったのはかんぽ生命の出来事でした。金融業全般にこのようなノルマ営業というのは当たり前のように横行しているのですが、
かんぽ生命の保険販売も相当なノルマ主義があったようです。
そして達成できなかったりすると、上司から暴言を浴びせられたりします。
それだけではなく、ゆうちょ銀行の投資信託販売についてもクレームが発生したり、
日本郵便においても、年賀ハガキの販売ノルマが問題になりました。
年賀ハガキのノルマを達成するために、自分でハガキを大量購入する行為も続出。
そして大量購入したハガキを金券ショップでお金に換えるという行為も横行していました。
ということは当然、そのグループ会社のトップに立つ日本郵政の経営者の方針に問題がある。ということになりますよね。
徹底的に原因究明し、改善に努める・・ということで辞任は避けていたのですが、
ようやく東京都内で記者会見し、かんぽ生命の植平光彦社長、長門社長、日本郵便の横山邦男社長がそろって辞任することを発表しました。
トップの辞任で日本郵政グループは変革するのか?
トップが辞任することで、このノルマ主義の体質やパワハラなどの社風も改善されるのではと株主も期待していたでしょうし、社員だって期待していたはずです。ところが・・
このニュースにがっかりした人は多かったのではないでしょうか?
日本郵政の長門正貢社長の後任に増田寛也元総務相が就任する方向。
かんぽ生命の植平光彦社長と保険の販売を手掛ける日本郵便の横山邦男社長の辞任後はかんぽ生命の社長には千田(せんだ)哲也副社長、日本郵便には日本郵政の衣川(きぬがわ)和秀専務執行役と、いずれも旧郵政省出身のグループ幹部が就任する。
経営陣を刷新し、抜本的な改革に取り組む。
よく見ると、代わりに就任する人たちもみんな元郵政省出身の人たちなので、あまり状況としては変わらないというのは誰もが予想できるのではないでしょうか??
郵政のトップは増田寛也氏が6人目で、行政出身は3代前の坂篤郎氏以来となります。
日本郵政の国営時代は高金利で集めた100兆円単位の郵便貯金や簡保マネーが財政投融資に使われていました。本来は国の政策のために使われる財政投融資ですが、非効率な運用をされているケースが目に余り、小泉政権が郵政民営化法を成立させ、
ところが、今はもう2019年です。そして冒頭説明した通り、株式は日本郵政がほとんどゆうちょ銀行やかんぽ生命の株式を持ったままです。
民営化に踏み切れない理由
郵便局は地方のありとあらゆる場所に点在しています。東京や大阪などの大きな都市の人はピンとこないかもしれませんが、農村などの地方の過疎地は高齢の方が歩いていけるような場所に郵便局等があることは非常に大切なことなのです。
一般企業なら、そのような農村の過疎地の支店などは採算が合わないので閉鎖されるはずです。しかし半官半民というような位置づけにあることで、このような不採算な支店が維持できているという面もあります。
中途半端な半官半民が、保険商品や投資信託においても商品開発が進まず、魅力のない商品が存続することになりました。
少し賢い人なら、比較をするのでゆうちょ銀行やかんぽ生命でもっている商品は明らかに他社の民間の商品に比べて見劣りするのは明らかです。
これらの商品を販売して収益を得るためには・・
- わからない人に販売する
- 無理やり販売する
- ダマして販売する
もはやこれしか手段がなかったのです。
その結果、金融庁はかんぽ生命と日本郵便には業務停止命令。日本郵政に対して業務改善命令。総務省も日本郵便に3カ月の業務停止命令、日本郵政には業務改善命令をだしました。
さらに、
民営化できない理由のもう一つとして、
郵便局長で組織している全国郵便局長会が自民党の有力支持団体として存在しています。
このような構図がある以上まだまだ官民との癒着は無くなりそうにありませんね。
組織が硬直化している企業は腐りやすい
私も上場企業に勤務していた経歴があります。
しかし、自分の場合は組織が腐っているような会社ではなかったとは思いますが、やはり就職活動をしている中で歴史のある企業でなんだか話を着ていて違和感を感じていた企業はいくつかパワハラの問題、労務問題がニュースで出るなど今になって問題が出てきています。
自分が就職活動をしていたのが1997年なので、10年以上前に感じたものですが、当時はなかなか明るみに出なかった問題だっただけです。
パワハラや上司の圧力などで社員を消耗させている企業は、長い目で見ればやっぱり衰退しています。
マスコミなどで明るみに出れば、ああ・・やっぱりかと思います。
日本の大手企業は実はこのような企業はかなり多く存在しています。
就職活動で、有名企業に入社できると安泰・・ましてや公務員が安泰と思うのは大きな間違いだと私は思います。
精神的に消耗をして、終身雇用さえも今は補償してくれない時代です。
もし親の立場で子どもの就職の相談に乗るのなら、公務員や大企業がいいというアドバイスはあまりにも視野が狭すぎます。
子どもが社内の軋轢にストレスを感じ、結局数年で退社。
ということもよくある話です。
今就職活動をしている人も同様です、公務員や大企業という企業名だけで選ぶのではなく、そもそも就職活動時期に就職をする必要があるのか??
いまは年間採用や、リファラル採用(友達や先輩の紹介採用)という制度もあります。
就職をする時の企業選びも、投資家として有望な投資先を選ぶのも視点は同じです。
売りて良し、買い手良し、世間良しの3方良しを実践してくれる企業が日本にも増えてくれるのを望むばかりです。
この記事を書いた人
ファイナンシャルプランナー金子 賢司
これまで1000件以上の家計、住宅ローン、生命保険、損害保険、資産運用の相談に携わる。UHBなどのテレビのコメンテーターや確定拠出年金等のセミナーを毎年約50回実施。CFP資格保有者。TLC(生命保険協会認定FP(TLC資格とは))、損害保険トータルプランナー、公式HP
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