保険法

保険法

保険契約とは

保険法では、保険法第2条第一号により、保険契約とは保険契約、共済契約その他いかなる名称であっても、当事者の一方(保険者)が一定の自由が生じたことを条件として財産上の給付(保険の給付)を行うことを約束すること(契約すること)。

そして相手方(契約者)が一定の可能性に応じた保険料(共済の掛金)を支払う契約と定義されています。

難しく書いてあるのですが、保険契約というものは、民間の生命保険や都道府県民共済や、コープ共済などいろいろありますが、一定の条件のもと支払う契約をするもの。かつ危険に応じて一定の保険料を払うものは保険契約とみなしますよということです。

そして保険法で保険の種類を3つに分類しています。

保険契約の3分類

①損害保険契約

保険契約のうち、保険者が、偶然の事故によって生じる損害を填補(てんぽ)することを約するもの。

②生命保険契約

保険契約のうち、保険者が人の生存に関して一定の保険給付を行うことを約するもの。

③傷害疾病契約

保険契約のうち、保険者が人の傷害疾病に基づき一定の保険給付を行うことを約するもの。

これらの①~③に共通して、どのようなことにいくら払うのか?①は損失を填補するという内容なので、発生した損失に対してその損失額を支払うという取り決めにはなりますが、無尽蔵に支払うわけではありません。

いずれにしても、どのようなケースでいくら払うのか?お支払いできないときはどのような取り扱いになるのか?という取り決めがあらかじめ書かれているのが

保険約款

なのです。

民法と保険法

保険法とは

保険契約を規律する法律を規律する法律を保険法といいます。

保険法第1条で、保険に掛かる契約の成立、効力、履行や終了についてはほかに法令の定めるものがない限り、保険法で定めるところによる。と書かれています。

他に特別法というものが存在し、特別法を用意していれば特別法を優先しますが、特段の定めがない限りは保険法が優先されます。

保険法に規定がない場合は民法が適応されます。

これまでは商法の中に保険法という章が設けられていたのですが、保険法だけ商法から独立し、内容もより契約者保護の観点なり平成20年に制定されました。

似たようなもので保険業法というものがありますが、このタイミングでは保険業法に変更はありません。その後平成28年5月~保険業法は改正がありました。

保険法の改定内容

保険法改定内容の主な内容は以下の通りになります。

①保険、共済ルールの共通化

これまで商法の対象は保険だけだったが、共済もその範囲に含めるようになった。

②傷害疾病契約規定の新設

商法の規定になかった傷害疾病契約についても規定を設けた。

③契約者保護(片面的強行規定)

保険法の規定よりも保険契約者、被保険者、保険金受取人いずれかに不利な内容の約款を定めても無効になる片面的強行規定が採用された。(企業分野はのぞく)

片面的強行規定と比較して任意規定、絶対的強行規定というものがある。

任意規定とは任意なので、Aという法律に反する約款の条文があってもその条文は無効にならない。

絶対的強行規定とはAという法律に反する法律は無効になる。消費者によくも悪くも反すれば無効。

片面的強行規定は、有利ならいいけども、不利になったら無効になる。

という違いがあります。

告知義務について

告知義務は自発的告知義務から、質疑応答義務に変更され、保険契約者や被保険者は保険会社から告知を求められた事項(告知事項)を告知するだけでよくなりました。

また保険募集人から、告知の妨害や教唆があった場合、保険会社は契約を解除できません。

保険募集人がお客様に、それ告知しなくてもいいですよ。ですとか、その病気なかったことにしましょうと仕向けて契約に至った場合は保険会社は解除できないということです。

通地義務について

保険契約者は、保険契約をした後に変更が生じた場合はその事実を保険会社に伝えなければなりません。

具体的には東京の鉄筋コンクリートのマンションに住んでいて火災保険に加入していたが、大阪の木造の中古の戸建てに引っ越して住んでいて、保険会社に通知を忘れていた・・のような場合。鉄筋コンクリートよりも木造の物件の方がはるかに火災やそのほかの災害で損害を受ける可能性が高いため、保険料も高く設定する必要があります。

その引っ越しの連絡を契約者が故意、または重大な過失で保険会社に伝えていなかった場合のみ保険会社は通地義務違反により契約を解除できます。

④保険金の支払い時期

保険金の支払い時期の規定を新設。適正な保険金支払いのために必要な時間は保険会社に認められているのですが、それをすぎてしまった場合は、保険会社は延滞の責任を負います。ただし契約者が必要な情報を提供しない等の妨げがあったような場合はその期間は保険会社は延滞の責任は負いません。

実務では保険金の支払い時期は各保険会社によって異なり、それぞれ約款に定められている。

⑤賠償責任保険による先取特権

そもそも先取特権とは?わかりやすく説明します

たとえばAさんに対してBさん、Cさん、Dさんがそれぞれ100万円ずつお金を貸していたとします。

とある日Aさんは破産をしてしまいました。

Aさんは何とかお金を工面して60万円あることがわかりました。

ほんとうはB,C,Dさんは100万円を返してほしいところですが、無い人に請求してもお金は出てきません。

仕方ないね。3人で20万円ずつに分けようか・・・。

順当にいけばこのような内容になるはずです。

しかし、Bさんが先取特権という権利を持っていたとするとBさんは優先してお金を返してもらうことができます。

今回のケースであればBさんが先取特権を持っていたことで60万円総取り(とはいえ損をしていますが・・)、C,Dさんは返してもらえない・・という急展開になってしまうのです。

他の債権者に対して優先的に弁済を受けられる権利を先取特権と言います。

賠償責任保険の先取特権はなぜ必要なのか?

某メーカーの食品を食べて食中毒をAさんが起こしました。メーカーは製造物責任保険(PL保険)に加入をしていたのでそこから支払うことも可能だったのですが、そのメーカーは風評被害などにより破産してしまったとします。

メーカーは破産してしまったのですが、Aさんは何としてもこの食中毒で被った医療費や働けなくなった期間の収入保障をしてほしいとメーカーが加入していた保険会社に慰謝料をとして保険金を請求したとします。

メーカーが加入している保険に、被害者が直接請求することは可能なのでしょうか?

当然このようなケースでは製造物責任保険(PL保険)は支払の対象になります。

メーカーは保険会社から保険金をうけとって、そのお金を被害者であるAさんに支払い、示談をかわして終了と行きたいところですが、

メーカーが破産してしまうと従来はこうはいかなかったのです。

あくまでも保険契約者はメーカーであり、被害者がかわいそうなのはわかりますが、このようなケースでは保険契約に対して保険金請求をする権限はありませんでした。

被保険者が加害者だった場合、この被保険者から損害を受けた被害者は保険では実質補償されなくなってしまい、肝心の被害者が保護されない状態となってしまいます。

そこで2010年4月以降、被保険者(加害者)または相手(被害者)に賠償責任保険金をお支払いすることができるようになりました。当たり前のようで、実はあたりまえでなかったのです。

そこで以下の2パターンに分けて新たに保険金の支払い方法が設けられました。

保険金を被保険者(加害者)に支払う場合

・被保険者が被害者に損害賠償金を支払った後である場合

・被保険者が損賠賠償金を被害者に支払う前に、保険会社が保険金を被保険者(加害者)に払ってもよいですと被害者の承諾を得た場合。

保険金を被害者に払う場合

・被保険者が保険会社に直接被害者に保険金を払ってねと指示があったとき

・被害者が前述の先取特権を行使した場合

⑥被保険者の同意

保険契約者と被保険者が異なる保険契約は被保険者の同意がない場合は無効になる。

⑦被保険者から契約者への解除請求

被保険者が契約者に契約の解除を請求することができるようになった。

⑧保険契約者からの介入権制度の新設

契約者の破産管財人や差し押さえ債権者、質権者などの保険契約を解除することができるものが、保険契約を解除しようとしたとき、一定の保険金受取人は介入権を行使して契約を存続させることとができるようになりました。

Aさんが多額の借金をしてしまいました、その債権者がAさんから債務を回収をしようといろいろ資産を洗い出していると、満期になるとお金が返ってくるという資産性のある生命保険契約を見つけました。

債権者はAさんの保険契約を解除して、その解除することでもらえる返戻金で借金を回収しようとします。

しかし、万が一Aさんが高齢者だったら・・

私その保険を解約してしまったら、、万が一がんになったら補償が無くなってしまいます。

また加入すればというお話ですが、高齢になると保険料は高くなりますし、もしAさんがすでに病気で保険に加入できない状態だったとしたら、債権者がいくらA さんに対して債権があったとしてもその契約を解約してしまうのはあまりに酷です。

そこで一定の条件を満たせば一定の保険金受取人(介入権者)は契約の存続を図ることができるようになりました。

これを介入権といいます。

保険金の受取人は以下の要件を全て満たすことで、介入権を行使することができ、保険契約を存続させることができるようになりました。

①介入権を行使することを保険契約者が同意していること

②債権者が保険会社に契約解除を通知してから1カ月以内に、通知時点での解約返戻金相当額を債権者に支払うこと。

③②の対応をしたことを保険会社に伝えること。

やはり債務は債務なので、結局は保険の解約返戻金相当額は返済することは求められますが、それでも保険は年を取れば取るほど使用する可能性も高いので介入権を行使して保険契約を維持をすることはメリットが大きいと言えるでしょう。

⑨保険金受取人の変更

①保険契約者は、支払事由が発生するまでは保険会社に意思表示をすれば保険金受取人を変更することができます。9月1日に郵送して、保険会社に3日に到着した場合は1日にさかのぼって変更の効力は有効になります。

しかし2日に保険会社が変更前の受取人に保険金を払ってしまった場合はその支払は有効です。

②遺言によっても保険契約者変更は可能

ただし遺言があれば自動的に契約者変更になるわけではなく、保険契約者の相続人が保険会社に遺言があったことを通知しなければ受取人変更は有効にならないので注意が必要です。

③被保険者の同意

亡くなった時の保険契約については保険金受取人を変更する場合は被保険者の同意が必要になります。

疾病や傷病の定額保険契約については、変更後保険金受取人と被保険者が違うときは被保険者の同意が必要ですが、変更後に保険金受取人と被保険者が同じになる場合は被保険者の同意は必要ありません。

ただし、疾病や傷害によって亡くなった場合に支払われる定額保険については原則変更後に保険金受取人と被保険者が一緒になる場合であっても、被保険者の同意が必要になります。

⑩保険の免責と保険料積立金の払い戻しについて

生命保険は本来被保険者が亡くなった時や特定の事由に該当した時に保険金受取人お金が支払らわれるのですが、亡くなった理由によっては保険会社は保険金を支払う必要がない(免責)ことがあります。その場合は原則は保険会社は保険料積立金を払い戻す必要があります。

保険契約者がわざとの行為で被保険者が亡くなってしまった、または重大な過失によって傷害疾病定額保険の給付が発生した時などは積立金を払い戻す必要もないことがあります。

⑪重大事由による解除

⑩に関連してですが、故意に保険契約者の行為で被保険者が亡くなってしまった。、故意に障害疾病定額保険の給付要件を発生させたり、保険金受取を目的として詐欺行為などを行った場合は保険会社は契約を解除することができます。

⑫保険料返還の制限

保険契約が無効になったり取り消しになった場合でも保険会社が保険料を返さなくていい場合が保険法に定められています。

①保険契約者や受取人、被保険者による詐欺や脅迫によって保険契約が取り消された場合。

②支払い事由に該当していることを知っていて保険に加入して、傷害疾病定額保険契約に加入をしたことが発覚し取り消しになった場合。(保険会社が知ったうえで加入をした場合を除く)

保険会社によっては約款によっては返還されない場合があるうえ、一時払の契約は返還は原則ありません。

⑬保険金請求の時効

保険金受取人の保険請求権は3年で時効となり消滅する。

⑭保険料の請求

保険会社の保険料の請求権は1年で時効となり消滅する。

保険法が変更になりましたが、以下の要件については保険改定前の既契約にも適用される。

①保険金の支払い時期

②保険金受取人の変更

③重大事由による解除

④介入権

⑤先取特権