誰でもわかる!労災の上乗せ保険と使用者賠償責任保険

誰でもわかる!労災の上乗せ保険と使用者賠償責任保険

各損害保険会社がおすすめしている建設業向けの労災上乗せプランには様々な商品がありますが何を選んだらよいのでしょうか?という問い合わせをいただきます。

労災の上乗せって何なんですか?

全国中小企業団体中央会、または商工会議所に加入していれば、左記の団体が保険者となる割安な業務災害補償制度をおすすめしています。

民間の保険会社の扱っている労災の上乗せ保険よりもはるかに安く加入をすることができます。

やたらと保険会社がこの労災上乗せ保険をオススメしてくるんだけどほんとに必要なんだろか?

労災の上乗せ保険は労災認定がないと使えない

労災上乗せプランの保険で確認をしておかなければいけないのは、労災認定されることが給付要件になっていることです。

そう考えると政府労災では不足する分だけを保険で支払うので、魅力を感じない人も多いと思います。

そもそも労災なんて事故があったって使いたくないよというのが本心だと思います。

業務上の事故で従業員が怪我をしたときに給付される労災を支払ってもらうためには、労災保険料というものを毎年払います。

その労災を使えば保険料が上がってしまうのです。

しかしよほど重大な事故がない限り保険料が上昇することはありません。

どちらかというと懸念するのは労災事故があることで労働監督署の立ち入りがあることの方が心配ですよね。

事業主本人は特に問題ないと思っても、用意する資料や問答集、社労士との打ち合わせ。

思わぬ指摘を労働監督署から受けた。

さほど厳しい労働環境ではないにしても、労働監督署基準ではあちこちつつかれて、

社員にききとり調査等が行われて、

たまたま会社で面白くないことがある社員に聞き取りされて日ごろの不満のお返しとばかりあることないこといい始めた・・

なんてことがあればそれこそ会社存続にかかわる問題に発展することにもなりかねません。

そう考えると小さなケガではポケットマネーでお金を払うから労災使わないで・・というのが事業主のホンネです。

労災上乗せ保険入ったけど労災認定にならないと保険が使えない、、

でも労災は使いたくない・・というジレンマに陥ってしまいます。

そう考えると多少高くても労災認定を要件としない従業員の傷害保険を検討するのもよいかも知れません。

実際にそういう商品もあります。

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Alexas_Fotos / Pixabay

使用者賠償責任保険|労災にまつわるリスクで一番恐ろしいこと・・遺族からの訴え

さて、社員の怪我等であればまあいろいろあったとしても労災で払えます。

正直、亡くなってしまうくらいの事故でもない限りは治療費は入院代はさほどダメージではないかもしれません。

亡くなってしまうほどの事故であっても、生命保険などで備えておけばおおよその金額はカバーできます。

もっとも恐ろしいのは遺族からの訴えです。

大黒柱の主人を失ったのは経営者の責任だ!今後の生活費、慰謝料、子どもの教育費を請求します!

この請求額は判例をみても強烈です。

これを使用者賠償責任と言います。

経営者が従業員(使用者)に賠償責任を負うことになってしまうのです。

近年ではうつ病や過労で亡くなってしまったも遺族からの請求が当然のように認められています。

安全配慮義務違反という恐怖

遺族は事業主や経営者を相手取って、亡くなった事故との因果関係をついてきます。正直これは逃れようがありません。

例えばですが、工場のラインで従業員が腕を挟んで働けなくなったとします。

会社としてはマニュアルや毎日の点呼で気をつけるように言ったとしても、危険だとわかっていながらそこには入れないように柵を作るなどの

「安全配慮義務を怠った」

と遺族から訴訟を起こされては勝ち目がありません。

細かいところをつけば、事業主や経営者も忙しいしコストにも限りがあり、行き届かないところだってあります。

この従業員のケガや亡くなったことで遺族からの訴えを無傷で避けることはかなりハードルが高いのです。

労災の上乗せよりも、この遺族からの訴えに対しての対策が企業にとっては必須なのです。

その請求額は一家の大黒柱を失って今後、遺族が生活していくための生活費、精神的慰謝料など判例では億単位になる事例も見受けられます。

こうなると従業員のケガで見舞金どころの騒ぎではありません。

労災の上乗せよりも、この従業員の遺族からの訴えがもっとも恐ろしいのです。

中小企業であれば一発倒産することもあり得るのではないでしょうか?

そんな遺族からの訴えに対して、この世を去ってしまったり後遺症がのこり、慰謝料や大黒柱がもし存在していたら受けられたであろう逸失利益を保険金の範囲内で払うのが

「使用者賠償責任保険」

なのです。

労災の上乗せプラス使用者賠償責任保険で労災のリスクは万全

したがって、労政の上乗せ保険だけでは企業防衛としてはまだまだ不足。使用者賠償責任保険も用意しておく必要があります。

ところが建設業や物流業では非常に労災上乗せ保険や使用者賠償責任保険の使用頻度も高いですし、保険料も高額です。

いろんな側面を考慮して保険の内容を選択しましょう。

労災の上乗せや使用者賠償責任保険で安いのは?

なんといっても商工会や中央会が幹事をしている業務災害補償プランです。原則は会員でないと加入することができません。会員の数のメリットで非常に保険料は安く設定されている商品です。

この業務災害補償制度に入会したいから中央会や商工会議所に加入するという逆パターンは原則的には認められません。保険会社によっては年間3000円でこのプランに加入する資格を得ることができます。

私がこの業務災害補償制度で一番すごいなと思う点は、うつ病をはじめとした「心の病」によって経営者に対して損害賠償責任を求められたときにこちらの補償でお支払いの対象になります。

心の病での労災請求が増えており、精神障害や過労でこの世を去ってしまった社員への配慮も安全配慮義務の一環であるということが平成20年3月に明文化されたために心の病による労災請求が増えているのです。

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建設業の労災上乗せは全国建設業労災互助会制度

またはとにかく使用者賠償責任重視で労災の上乗せはさほど重視していない場合は、一般社団法人全国建設業労災互助会制度をご案内しています。

私がこの全国建設業労災互助会制度をおすすめするケースはとにかく保険料を削減したいというニーズが明確である時です。安いと言ってもそんなに変わらないでしょ。。と思うかも知れませんが、ケースによっては半額以下になる場合があります。

こちらはこの制度に加入するために互助会の会員になることは可能です。

業務災害補償制度も十分保険料は安いのですが、とにかく価格重視であれば全国建設業労災互助会はまずは知っておくべき商品と言えるでしょう。

どちらの制度も何をもとに保険料が決まるのか?

業務災害補償制度も、全国建設業労災互助会制度も、売上高をもとに毎月または年間に払う保険料を算出します。

売上高が大きい会社であれば当然社員や設備なども多くリスクが大きいので保険料は高く、売上高が小さい会社であれば、大きい会社よりは事故が起こるリスクが少ないという見方が考えられるので一般的には保険料は安くなります。

全国建設業互助会制度も、売上高ではありますが建設業を28種に分類し、内装や電気通信工事、建具工事などを兼業でおこなっている場合はそれぞれの売上高をもとに保険料を算出する必要があります。

結局どれがいいの?

私は建設業以外は業務災害補償プランをおすすめしています。

建設業については業務災害補償プランの保険料は全国建設業労災互助会にはかなわないケースが多いですが、社員の心の病による使用者賠償責任に対しても保険金でお支払いするという点はやはり強みであると言えるでしょう。

全国建設業労災互助会は私は労災の上積み補償の入院給付金(見舞金)が少ないなーと思っています。

しかし、使用者賠償責任リスクに対しての保険料は破格の安さです。あくまでも労災は見舞金でいいんだ!というニーズの方はこちらでもよいかもしれません。

また、多少高くても労災認定を待たずに給付が受けられる商品もあります。どこを重視するかで企業の労務リスクに備えてください。