地震保険は必要ない?地震保険の仕組みと火災保険との違いについて

地震保険は必要ない?地震保険の仕組みと火災保険との違いについて

2016年6月16日、北海道函館市で最大震度6弱の地震が発生しました。

比較的地震発生の情報が乏しかった北海道地区において地震でしたので、北海道に地震保険はまあいいかと思った方もちょっと検討してみようか・・と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?

損保協会は地震保険は必要保険です。ということで、みなさんに地震保険の加入をお勧めしています。火災保険に加入をするときに申込書をよく見てください。2か所署名、捺印をする欄があるはずです。一か所は保険の内容に了解しましたというごくごく当たり前の署名です。しかしもう一か所は何のための署名だと思いますか?これは今回ご案内する火災保険に地震保険がついていないことを了解しました。という署名になっているのです。

改めて地震保険について確認

通常加入している火災保険では地震の損害は補償されません

もう建物の火災保険に入っているんだから、地震があっても大丈夫です。と思っている方がいるかもしれません。しかし火災保険は、地震や津波によって建物や家財が損害を受けた場合は、保険金をお支払いできないとされています。特約としてつけられる場合は別として、もしみなさんが地震保険を全く意識せずに火災保険に加入していたとしたら、地震や津波による損害に関しては全く支払われないか、支払われても保険金額5%程度の見舞金が支払われるのがせいぜいです。

そしてさらに加えると、地震で火事になりました。地震で建物に亀裂が入りました。水道管やガス管にひびが入りました。これは確かに火災保険の不測かつ突発的という要件に該当するかもしれません。しかし、その損害が地震を原因とする場合、地震保険に加入をしていないと、火災保険に加入はしていても支払われないか、支払われてもごくわずかです。また地震による地滑りによる損害も同様です。

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地震保険も建物と家財の保険は別物です

以前、火災保険でも建物と家財の保険は別々に加入をするというお話をさせていただきました。
建物の火災保険だけ加入をしていた場合、仮に家が全焼してしまった場合建物は保険金が支払われますが、家の中の家具や家電などの家財は保険金が支払われません。
逆に
家財の火災保険だけ加入をしていた場合、仮に家が全焼した場合建物の保険金は支払われません。そして家の中の家具や家電などの家財は保険金が支払われません。

建物と家財を損害から守るためには建物の火災保険と家財の火災保険両方に加入をする必要があります。

地震保険についても同様です。地震保険にも建物の地震保険と家財の地震保険があるのです。

お住まいの住居を災害から守るためには建物の火災保険・家財の火災保険・建物の地震保険・家財の地震保険に全て加入する必要があります。

なぜ火災保険だけでは地震による火災保険を補償しないのか

大地震発生時には通常よりも火災発生件数が増えたり、同時多発的に起こるために消防設備が追い付かず焼失面積も大きくなったり、損害範囲が甚大なものになるケースが想定されます。地震保険はこのような特性から通常の民間会社単独でリスクを負うことは難しく、政府のバックアップのある(再保険といいます)地震保険で対応することになっています。

民間の保険会社だけでは責任を負いきれないくらい甚大になる可能性が高いからです。

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なぜ地震保険は火災保険金の50%までしか契約できないのか?

地震保険は火災保険の半分の金額までしか保険金額を設定できません。建物の火災保険の保険金額が5000万円であれば設定できる地震保険金額は2500万円まで建物の火災保険の保険金額3000万円なら1500万円です。

では・・建物の保険金額が1億5000万円だったら地震保険の保険金額は7500万円にできるかというとこれはできません。建物の火災保険の金額は5000万円が上限だからです。ただし、1世帯あたりですので、複数の世帯が居住するアパートなどは世帯数に5000万円をかけた金額が上限になります。

家財に関してはこの上限が1000万円と決められています。

このような上限はなぜ設けられているのでしょうか?

やはり巨大地震が発生した時の被害が甚大であることに起因します。地震保険は建物の補償というよりも、被災後に生活の安定を主旨とした保険だからです。一旦大震災が起こるとやはり広範囲に被害が及び、民間保険会社だけでは保険制度を維持することができないのです。ですので、損害を補償するというよりも、被災者の生活の再建を支えることを主旨とする保険であるとされています。

地震保険で全損となって住宅ローンだけが残ってしまい、新しく建物を購入する際にまた住宅ローンを組むいわゆる2重ローンについても地震保険に加入していれば全額補償とはいきませんが、地震保険によって万が一の時の負担は減らすことができます。

地震保険の火災保険は基本的には50%ですが、一部の保険会社では特約やオプションなどで火災保険と同様の金額まで地震保険金額を設定することも可能な場合があります。

地震保険の保険料は高い

地震保険の保険料は損害保険料算出機構という中立期間が算定しています。保険会社同士でどこの保険が一番お得なのか??というのは自動車保険や通常の火災保険ではあるかも知れませんが、地震保険はその保険の性質上保険料はどの保険会社も同じになっています。また、保険会社の利益はありませんし、代理店手数料等も極めて低く設定されています。

地震保険の保険料は高いと思われがちですが日本は地震の発生するリスクが高く、実際起こった際の金額等も予測をして保険料率を極力適正保険料になるように設定されています。ですので保険会社や損害保険料算出機構などが共謀して保険料をふんだくっているわけではないということです。

地震保険が高いのではなく、あなたの住んでいる場所がリスクが高いのでそれに見合った保険料をいただいているだけなのです。

また地震保険は火災保険の上乗せで、入りたい時にいつでも加入することができます。

一定の引き受け制限などがある場合がありますので、保険会社や担当者に相談してください。

地震保険の割引制度

保険料がそうはいっても高いというときは所定の確認資料の提出があれば、地震保険料が割引になることがあります。

①免震建築物割引・・・住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく免震建築物である場合(割引率50%)

②耐震等級割引・・・住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく耐震等級(構造躯体の倒壊など防止)または国土交通省の定める「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊など防止)の評価指針に基づく耐震等級を有している場合。

耐震等級3の場合割引率50%、耐震等級2の場合割引率30%、耐震等級1の場合割引率10%

③耐震診断割引・・・地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の欠課、改正建築基準法(昭和56年6月1日施行)における耐震基準を満たす場合(割引率10%)

④建築年割引・・・昭和56年6月1日以降に新築された建物である場合

2011年東日本震災、2016年の熊本地震。大きな地震は今後も日本列島で発生する可能性が十分あります。東日本震災では津波が犠牲者を増やした要因ですが、熊本地震では内陸の直下で発生し、津波は無かったものの家屋の倒壊といわれています。

大地震に備えるため、住宅の耐震化をする必要性も検討しましょう。政府や地方公共団体では耐震診断や耐震改修に関する費用負担を支援する制度が設けられています。

2重ローンの問題

被災地のその後の状況等を見ていると、よく2重ローンの問題という言葉を聞くと思います。2重ローンとは、今まで住宅ローンを払っていた人が、地震によって家屋が倒壊してしまったために新たに住居を購入する必要があり、再度住宅ローンを組むことを言います。

まだ住宅ローンを払いきっていない地震で倒壊した住居に加え、新たに住むための住宅ローンにも加入をしなければならない。これが2重ローンです。

地震保険はその特質上保険金によってこのローンの全てを賄うことは難しいかもしれませんが、経済的な負担を軽減するためには大きな役割を果たします。被災した際の国の支援制度と合わせれば、被災後の負担はかなり軽減することができるはずです。まずは知識として備えておくという意味で以下に震災後の国や自治体の支援制度についてご紹介します。

被災者生活再建支援金などの公的補償制度の紹介

この支援金は地震にかぎらず、暴風・豪雨・豪雪・洪水・高潮・地震・津波・噴火等自然災害全般が原因によって家が全壊、半壊した場合に支援金を給付する制度です。

市区町村で10世帯以上、都道府県では100世帯以上の住宅が全壊する等地域全体の被災規模が一定以上になると適用となります。

被災者生活再建支援金を申請するには被災の程度がわかる「罹災(りさい)証明書」を自治体から発行してもらう必要があります。罹災証明書をもとに要件に該当すれば以下の「基礎支援金」と「加算支援金」の給付を受けることができます。

・基礎支援金

前回と認められると100万円。大規模半壊と認められると50万円を受け取ることができます。

・加算支援金

新たに建設、購入をした場合は200万円、補修の場合は100万円、賃貸の場合(公営住宅以外)は50万円になります。

支援金を請求できるのは被災した家に実際住んでいた人に限られます。しかし、持ち家に限らず、借家も対象になるのでぜひ知っておいてください。申請時には罹災証明書を自治体から取り付ける必要があります、申請期限は13か月、加算支援金が37か月となっていますので、極力早めに請求しておけばうっかり取り忘れたということもありません。

・災害弔慰金

被災者で亡くなった場合は、その人が一家の大黒柱だった場合は500万が支給、その他は250万円が支給されます。

重度の高度障害の場合はその人が一家の大黒柱なら250万円、その他は125万円になります。